第2話 学校に到着

 しばらく馬車に揺られていると、喧騒が聞こえてくるとともに、馬車の揺れがおさまってきた。



「オリヴィアお嬢様、到着しましたよ。」


 ハンナは一足先に馬車を降りると、わたしに向かって手を差し出した。学生カバンを持ってその手をとり、続いてわたしも馬車を降りる。こういうことをするたびに、ああ、どっかの貴族みたいだな、と思う。まあ、貴族なんだけど。



 馬車から降りたわたしの目に飛び込んできたのは、どこか絵本で見たことのあるような、荘厳で立派なお城のような建物だった。少々古びてはいるが、しかし清潔感は損なわれることはなく、年季の入ったその様子は気品すら感じられた。


 ここは王立クレナージュ学園。王国中の貴族が集まり、13歳の入学から成人の18歳までの6年間を過ごす、全寮制の学園だ。ちなみに“国立”ではなく“王立”なのは、国王直轄ということを表しているらしい。

 まあ簡単に言えば、なんか凄い規模の学校ってことだ!(適当)



「……美しい校舎ね。」

「ええ。先々代の王の時代まで使われていた王城を、学園の校舎に再利用したそうですよ。」

「へえ。どうりでこんな山の上にあるわけね。攻められにくい王城の立地が、守るべき貴族の集まる学園っていう条件に合ったのかしら。」


 周辺はしばらく平地が続く。城下町の名残か、ふもとの街は今でも賑わっているようだ。しかし、学園がある山だけは大分標高が高くなっていて、そういえば馬車に乗っている時もずっと上り坂だったことを思い出した。

 こんな山道をずっと走らせた馬車の馬たちに対して、何となく申し訳ない気持ちになる。前世にあった自動車あたりがあればもうちょっと楽にできるんだろうなあ。



 そういえばこうやって馬車で長時間移動するというのは新鮮な感じがする。ただ単に前世で見たこともない乗り物だからかもしれないが、あまり前世で車とか、乗り物の類に乗らなかったから、というのもあるかもしれない。昔はどこか遠くに行く用事もなかったし、お母さんは免許を持っていなかったし。

 ……お父さんは、わたしを車に乗せてくれるほど、機嫌がよかった時はなかったし。




 ――ドンッ!


「うわっ」


 ぼーっと歩いていたせいか、何かにぶつかり、衝撃でしりもちをついてしまった。とりあえず身体を起こして謝ろうとしたその時、耳をつんざくような怒鳴り声が聞こえた。


「ちょっとアンタ!どこ見て歩いているのよ!!」


 ……ああ、どうも面倒くさい人にぶつかってしまったらしい。

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