二.水無月詩音との会合

 それから、およそ一週間が経った――。

 青年が疾走している。

 澱み一つなく澄み渡った青空のもとを。

 新築のビル群を、商店街の間を、そして、学園都市の上空を。

 太陽光を反射して燦々と照り返す家々は、屋上を駆け抜けるその青年をシルエットのごとく映し出し、余計に目立たせていた。

 リズミカルに空を舞い、

 屋上を駆け、

 地を蹴り上げる。

 

 商店街の軒並みを上がり下がりし、

 天を突くほどの新築の高層ビル群の密接地帯で踊り場から隣の踊り場へと移り、

 学園都市の上空を右折左折繰り返し、自動車にも劣らないスピードで、澱み一つなく澄み渡った青空のもとを駆け抜ける。

 

 ガチャリと両腰の機械仕掛けの箱のギアを回し、加速装置と飛行装置の合わせ奥義。

 メーターが振り切れる程の出力で――足を踏み込んで地を蹴り上げ――。

 「ふわり」と空を舞う感覚に身を委ねて、前傾姿勢で風を受ける。


 ブワっと反動で風が吹き込み、目の前の空気を一変させた。

 走ると共に、徐々に早く流れゆく街の景色。

 心地よい足取りの中、青年の足取りは軽やかだった。

 少なくとも、途中までは――。

 およそ五分くらい経った頃、途端にギッ――ギギィィィ――と引き摺った様な金属音が耳を襲う。


「しまっ……‼︎」


 またやっちまった。

 今度はどこがぶつかったのだろう?

 加速装置から伝わる衝撃に、青年はふと振り返る。

 

 すると、そこにはあらぬ方向に曲がってしまった小道具屋の軒。

 店の軒を破壊、いや、へし折ったってところか。そして怒り狂う店主。

 玉突き現象で広がってゆく騒音に、青年は焦りながらよろめく。


「あーあ。こりゃまずいね。」


 見下ろしてみれば、伝わった衝撃に驚いた出てきた商店街の店主達が自由奔放に飛び回る青年を見て愕然としている。

 いや、正確に言えば青年の肩に付けられた優勢適性者インスピレーターの印、「金の十字架」を見て、愕然としたのだ。

 

「ああクソ、やりやがった、またアイツらだ、優勢適性者インスピレーターだ‼︎」

「消え失せろ!無能共が!」


 群がった連中から浴びせられる聞き慣れた罵倒と、ペットボトルだのゴミ袋だの投擲。

 まあ、こちらは空中。当たるわけもないが。

 ”これだから頭の悪い「優勢適性者インスピレーター」は“だのと後ろ指を刺される。

 が、別段気にしてなどいない。いつものことだ。

 基本的に、「優勢適性者インスピレーター」は嫌われている。


 戦時中に非戦闘員が蔑まれ、疎まれる世に突入してくのは半ば不可抗力で、「劣勢適性者インコンピーター」に「優勢適性者インスピレーター」を責める資格はないと、世間では叩かれている為に、余計両者の軋轢は徐々に深まっていったのだ。

 青年は小道具屋の店主に顔を振り向けて軽くウィンクすると、再び加速した。


    †

 

 その青年の名前は――ローシェル・ド・ザクセン。

 数少ない未成年霊術師。推定S級のA級霊術師。

 ぶっちゃけて言えば、その中でもかなり強い方だ。

 ラフに羽織った黒い学生服に、後ろで結んだ黒い長髪。この学生服は都市の中心部にあるリリアザード学園のもので、女性と間違えられることも多いであろうその「美人風」の容貌は小柄。多少人より肩幅が狭いものの、余裕さを顔の全面に出した猛者の風格は一流そのものだ。

 彼はこの学園都市に海外から派遣留学として来た一年生だ。

 実戦成績優秀、学術並、性格難あり。

 

 名前の通り、彼は旧日本国ことローリャリオン共和国の人間ではない。

 というのも、この国では今、深刻な人数不足に悩まされている様で、霊術師が足りないのだとか。

 まあそんな訳で急遽派遣されてきた派遣戦士、それがローシェというわけだ。


「だから気をつけろって言ってんだろローシェ。こりゃ今回も説教確定だな。」

「こっちは終わったよ。ローシェ。」

 

 声の聞こえる方を振り向くと、ローシェの隊の五人のメンバー達だった。

 入路タナ、九条マナ、七蔵サナ、戸殿レイ、浦松ミツハ。彼らは皆、霊術師見習いである。

 そして、ローシェはこの隊の隊長だ。

 

「気をつけてるけど当たっちゃうんだよどうしても。あ、九条もおつかれ。」


 ローシェは手を振り、他のメンバーと合流した。


「じゃ、作戦実行!」

 

    †


《霊式プログラム、異常なし。身体との接続開始。非零術使はただちに避難してください。》


 無機質な機械音が、早口でアナウンスする。

 それと同時に聞こえてきたのは、遠距離受信型の接続通信機トランシーバー

『こちら第三学年司令。三時方向に向け、作戦を開始せよ。訓練ではあるが、全力で取り組め。』

「はいはい、いつも通りの段取り、そうでしょ?先輩。」


 リリアザード中央道路沿いの十階建てビル上から飛び上がり、滑空翼を広げる。叫びたくなるほどまっさらな晴天の中、統率がとれている訳でもなく疎らに滑空するローシェ班。

 先輩は今日もご機嫌斜めの様だ。

 煽り口調の返事に、舌打ちが通信機の向こう側で響き渡るのを感じて、ローシェはフンッと鼻息でお見舞いした。通信の不具合で生じるガガッ、ガーッという耳障りな効果音を添えて。

 すると、同級生の九条マナは心配げ、というか、呆れた雰囲気で、


「ちょっと、ローシェ。また喧嘩売って……私知らないからね。」


 と忠告する。

 九条マナは、本訓練の副官で、ローシェの補佐役だ。

 だが、傍若無人。キザ風に決めた長髪と同じくらいこの言葉が似合う彼に、そんな中途半端な忠告は効果なし。


先輩あいつらと喧嘩して、俺が負けたことがあるかよっての。」

 

 ローシェは得意げに指をパチンと鳴らすと、「ニッ」と同級生達に軽く愛想笑いで振り返る。

 目があった浦松は顔を背け、苦虫を噛み潰したかの様な表情をした。

 そんな纏まりの一文字も見出せない隊員を写す様に青空を反射した青みがかったステンドグラスを、強風の影響か少し凹んだ三階建ての軒のシーツの間を、そして目的地である三ブロック先の廃れたビルをローシェは見つけては指を差してゆく。


「あのさ、そういう問題じゃなくて……」


 九条は嘆息して、返す。

 そう言いかけた次の瞬間、『この馬ッ鹿野郎!』と激怒した声が通信機を通してローシェの耳に入ってきた。彼は微かに音割れして聞こえた唐突の大音量に思わずブッと唾を吹き出し、やれやれと袖で口を拭く。


「ちょいちょい、鼓膜壊す気ですか。」

『いくらA級だからって調子に乗りやがって……舐めてるとマジで本番死ぬぞ。』


 ローシェは大きなお世話だと言わんばかりの口調で、

 

「人類の戦線は順調に勝ち進み、負けても少しの負傷者のみ、死者なし。流石人類様様って感じでしょ?そんなに怖いんすか?先輩。ああ、あと、俺は一応推定S級ですからね。」

『あのなぁ!』

 

 この国に死者が出ていないというのは、まっぴらな嘘である。

 けれど、戦場に出たことのない霊術師達にとっては、そんなことは知る由もない。投げれてくるニュースは全て勝利の報告だけ。

 それなら、戦場に出た霊術師達がいかにして消えて行き、どの様な扱いをされるかなんて知らなくても良いのだ。


「はいはい毎度忠告ありがとさん、先輩。じゃ、ぼちぼち切りまーす。」

『先輩の忠告は素直に聞くものだぞ。それに……その口の聞き方は何だっつってんだよ!くっそ、後で覚え……!』


 ローシェは苛々と顔を顰めながら「あー怖い怖い」と言うと、「ブチッ」という音と共に、説教途中で通信を切断する。


「やっぱ駄目だこの人。推定ルートから四十パーセント近くもズレてるし。」


 と、九条は苦い顔をした。

 ――隊長は九条でいいじゃないか。

 振り返れば、後方の戸殿、七蔵も呆れた表情を浮かべている。誰もが思っている事実を、みなその胸の内に秘めていた。九条はこれでも隊員の中で一番冷静かつローシェを抜けば実力も妥当。

 だが、そんな理想を誰かが口にすれば、一瞬にしてこの、「ローシェとその仲間達」とも言いたくはないが、とにかくこの隊全体のスレッスレの均衡は今すぐにでも崩れ去ってしまうだろう。

 今回の作戦は指定された正しいルートを辿って目的地まで行き、指定物資を調達する。たったそれだけなのだが……

 気付けば、向かうべき方向からも少しズレている。グダグダだ。

 ――別に今回が初めてじゃない。

 前もその前訓練も同じ。そして終わると先輩の愚痴を聞くハメになると九条は憂鬱な気分だ。


 ――ほんと、ツイてない。

 九条は今更ながらも、自分の不幸を自覚せざるを得なかった。


「なぁ、副官。なんか近づいて来てねぇか?」


 話しかけたのは、航路地図担当の入路だ。九条はすぐさま望遠鏡を構え、位置を確認する。

 この隊で一番冷静な後方担当で、異変の伝達をすぐさま後方右方の七蔵か、左方の戸殿に伝える係で、この隊で唯一ローシェを認めている。


「え、ほんと?」

「ああ、この航路にあるチェックポイントにまず降りるとして、そっから出発する頃には遭遇しそうだ。」

 

 九条がペースを緩め、入路と航路を指でなぞっていると、突然別部隊接続通信機インタートランシーバーが鳴る。

 ――ピピッ‼︎

 突然鳴り響く装置のサイン。どうやら入路の言うように、近くに他班のメンバーを感知した様だ。

 距離1,000。その隊はどうやら一人の様だった。他のメンバーが何処かに隠れているのか、それとも単独行動なのかは、分からないが。


    †


 連絡班なのか分からないが、近づいてくる班が来るまで一時休憩を取ることにした。

 五階建てのビル階段の広めな踊り場。ローシェ含めた第三班が指定された「チェックポイント」に現着。

 人が住んでいる様子はなく、一見ただちょっと背が高いだけのの雑居ビル。

 というか、実際そうなのだろう。チェックポイントにするには丁度いいし、何か壊しでもしない限りは、迷惑もかけなくて済みそうだ。

 重い空気が流れる第三班、その原因は、もちろんローシェだ。


「ほんっと信じられない!一体どういうつもりなのローシェ‼︎」


 そんな中、堰を切ったようにヒステリックな声でローシェを非難したのは、七蔵サナだ。綺麗に整ったボブヘアーの赤髪の少女である。

 予想外ではない。九条よりも物をはっきりと言うタイプで、この隊が結成されてからというもの、ローシェとは度々ぶつかっている。


「何がさ。」

「何が、じゃないよ‼︎先輩に対してあんな態度とってさ、恥ずかしくないの?」

「恥ずかしい?それは未だに実力不足な先輩方が持つ感情だろうが。」

「あんたそれでも本当に実戦経験あるわけ⁈」


 薄暗い踊り場に七蔵の声が響き渡る。

 煽るように風が強まり、階段下の空き缶が不快な金属音を立てながら階段を下り転がってゆく。

 入路はまたか、と呆れた表情で、


「流石にちょっとさ、今喧嘩は……」

「タナくんは黙ってて!」


 入路の仲裁を振り切り、七蔵が睨みつける。

 七蔵は顔を俯け、唇を噛み締めていた。

 

「先輩言ってたじゃん、ここが戦場だったらどうするのって……」


 彼女も彼女なりに必死なのだ。人一倍真面目で、正義感が強く、この隊の誰よりも純真。だからこそ危ういのだ。この国の上の連中をまるでヒーローの様に尊敬しているその様が。

 睨みつけてくる七蔵に対して、ローシェは少し間を置き、その場に座って返す。


「バカか、実戦経験あるからこそ言ってんだよ。それにさ、戦時中の癖して平和ボケしたこの国の連中に、同じこと言ったら笑われるよ。」


 半分、冗談混じりで、半分本気だった。

 旧名の「日本国」という名前を失い、失意の中、世界同盟に組み込まれていったこの国、ローリャリオン共和国の連中は、もう人類の尊厳など二の次、いや、もはやどうでも良くなった様に見える。もちろん、全ての上の連中unknownerがそうという訳ではないが。


「ねえ、それどういう意味?説明してもらええるかしら。」


 七蔵は壁に手を突いて、ローシェに詰め寄る。眉を潜め、顔を貫かんばかりの鋭い視線。

 

「戦死者なし、『死神様ヨミツカイ』との戦闘は毎回勝ちました勝ちましたばっかり。何故かわかるか?」

「何よ急に。そんなの、あんたと違って隊長がしっかりしてるからに決まってるでしょう‼︎」

「お前、やっぱ性根から馬鹿だな。少しは考えてから答えろ。」

「は?何なの?さっきから。」


 七蔵は口を尖らせて反発する。

 

「馬鹿なお前に特別教えてやるよ。それは、この国の連中のやる気がないからさ。」

「何言って……」

「まっ、そりゃそうだよな、うん。壁の中は確かに安全だ。弛んでも仕方がない。人類の威厳よりも、生きていけりゃいいって惰性に、負けてるんだようちの国は。」


 ローシェは七蔵の近くへ寄ると、親指を下げて言い切った。なぜ優勢適性者インスピレーターが忌み嫌われているのか。その一番の理由が、そこにある。これ程の能力者がいるのに、何年経っても何の成果も得られないところが。

 胸ぐらを掴み、まるで見下す様に眺めてくる七蔵サナは、負けじと荒げた口調でさらに詰め寄る。


「何を分かった様に……‼︎」

「分かってるさ。少なくとも、ここの誰よりも、な。」

「だったら……」

「もしもやる気があったのなら、もうとっくに都市の一、二個、いや、何十、何百もの廃墟都市があのクソったれな『亡霊ヨミツカイ』共から奪い返せてるんだよ。でも、今は違う。今の俺たちの役目は、ちゃんと命懸けで戦ってますよアピールをする。それだけの為の戦いさ。」

「うぅ……」

「それを知った上で言ってるんだよ俺は。ほら見ろ、何も言い返せないじゃないか。」


 ローシェそう言い切り、七蔵の手を払った。手が俯いていた七蔵の顔に掠り、少し髪が靡く。すると、なんということだろう。その顔は涙ぐんでいた。

「うぅぅ……」

 ローシェを睨みつけ、泣くまいと必死に堪えている。

 いやいや、まさか泣くとは……

 ちょっと言いすぎたと、流石のローシェも罪悪感を感じた。慌てて姿勢を下げると、ぺこりぺこりと謝り始め――九条が顔を覗き込んできた。


「ねぇ、ローシェさん?」

 九条の声に思わず目を閉じると、耳に激痛が走った。あり得ないパワーで引っ張られていたのだ。


「ちょまっ、いたたたたたちぎれる、ちぎれるって。」

「あーごめんなさいねえ、隊長さん。でも女の子をも泣かせるなんて、流石にどーなの。さあ、あなたお得意の詭弁を聞かせてくれてもいーんだよー。ねぇ隊長さん?」

「ぁのう、ご、ごめんなさい……」


 無表情で睨みつける九条にローシェは肩を窄め、縮こまる。

 九条は逃さん様にと肩をがっしり掴み、顔を覗かせた。


「声がちーさいですねローシェル・ド・ザクセン隊長。女の子を泣かせたんだからもっと誠意を込めてサナちゃんに土下座しなさい?分かった?」

「ぁぃ……」

「わーかーりーまーしーたーかー?」

「ゴメンナサイ――――!超ゴメンナサイ――――!」


 全く、こいつらは。

 地面に飛び込む勢いで、ローシェは土下座をすると、七蔵が顔を紅くして顔を背けた。


「泣いてないもん!」


    †


 そんな七蔵はさておき、ローシェは手洗いに行った。

 もちろん、隊長として何かあったら呼んでこいとだけ伝えて。

 腕を伸ばして伸びをするもの、先輩の愚痴を言い合うもの、給水をするもの、ローシェを睨みつけるもの、つまり九条マナなど、様子はそれぞれだ。

 ローシェが席を外している間、九条は感知した別部隊について他の全班員に共有した。


「それで、その別部隊ってどこなんですか?」


 曇ったメガネをかけた同級生、戸殿レイが、ズレた眼鏡を人差し指でクイクイと押さえながら聞く。インテリ系の仕草をする彼はこう見えても、勉強面では並程度という。

 副官の九条は別部隊接続通信機インタートランシーバーの通信を確認し、特定を急ぐ。


「ちょっと調べてみるね。」

「セントアッカード学園、水無月詩音。」


 低身長で清楚な雰囲気を醸し出す浦松ミツハがボソリと呟き、空を指差す。


「ええっ、あの超有名な⁈」


 九条はよろめきながら、必死に望遠鏡を回す。

 ――水無月詩音。

 ここら辺の優勢適性者インスピレーターにとって、その名を知らぬ者はいない。

 最年少にしてS級霊術師にまで上り詰めた超優等生で、学園都市最強の四天王にも匹敵するのだとか。

 指差す先を見ると、確かにほとんど点と言っても過言では無いサイズの何かが見えた。とはいえ、ここからではそれが何かまでは分からないが。


「え、ちょ、色々と突っ込みたいんだけどまずさ、まさかこっから見えたとか言わな……」

「見えた。見えないの?」

「えっと、視力いく――」

「ローシェ戻って来たよ、教えないの?」


 浦松ミツハは静かに頷きながら、九条の言葉を遮って”隊長”であるローシェと目を合わせる。

 

「あー、まぁそうね。」


 生返事で九条が返す。トラブルを起こしたくない。一番最初に思ったことが、それだった。ローシェは再び荷物を担ぐと、少し嫌がる九条に顔を近づけ、


「近づいている隊がいるって聞いたんだけど。」


 と九条に問いかける。

 ずっと黙っていた戸殿は曇ったメガネを布巾で拭きながら座り込むと、ローシェをじっと眺める。その目には激しく非難する様な、否定する様な、負の感情が写っている。


「引っ込んで下さい、隊長。貴方に面倒事を起こされると厄介です。」


 その答えに、ローシェは少し表情を曇らせた。



 やがて入路は空を振り返ると、水無月詩音の姿を確認した。

 真っ直ぐ綺麗なストレートの紫色の髪に、厳かささえ感じる長髪が真珠色のリボンで結われている。”お嬢様“の象徴である白地に緑のセントアッカード学園のセーラー服は、ヒラヒラと風に煽られ、宝石のような瞳は確かにローシェ達に向けられていた。

 この学園都市に不均衡な程、恐ろしい程――まさに完璧な美人だ。


「セントアッカード学園の霊術師、水無月詩音です。ローシェル・ド・ザクセンに用あって来ました。」


 水無月詩音は、落ち着いた口調で、霊術師ローシェル・ド・ザクセンと目を合わせた。

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