第11話(12:17)

つばさって、努力家だよな。

「それでいて、同時に苦労者だよな。

「いつも誰かの為に尽くすことを選んで、他人からみればまるで損失になるようなことを平気でやってくれる。

「小学校の頃は、そうだった。

「今も学級委員になったりしているなら、多分変わってないと思う。

「それが、どれだけ自分の負担になっているかなんて省みていないんだよな。

「だから、知らないうちに壊れる。

「今まではまだそういうことがなかった。でも、これから先どうかは分からない。

「そうなる前に、俺が教えてやる。

「嫌われても、仕方ないと思う。

「俺は前置きというのが嫌いだから、本題に入るぞ。

「翼は無理をしすぎだ。

「どこからどう見ても、仕事を背負いすぎだ。今日は俺が連れ出したからいいものの、そうじゃなきゃ過労死してしまう。

「そんなことで死なないって、比喩だ、いくらなんでも。

「翼が有能だし、他の人達にやらせるくらいなら翼がやったほうがいいっていうのはわかる。

「ただ、やりすぎなんだよ。一人で背負い込むには、荷が重すぎる。

「翼自身は良くても、周りは心配する。今俺が心配しているように。

「だから、もう止めてほしい。

「それと、もう一つ。

「努力は、報われるから」


 後の言葉は、聞こえていなかった。

 夢中で席を立って、階段へ走る。

 人の波に紛れて、すぐに祭は見えなくなった。追ってくるかとも思ったけれど、声は聞こえなかった。

 人は脆いものだ。

 自分がわかっていて、わかっている事をわかっていないふりをしていた事は、簡単に人を壊すことができる武器になる。

 目から水が溢れた。日差しの当たる廊下に落ちる。きっとすぐに消えてなくなるだろうな。

 まつり、ごめん。

 ――さよなら。

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