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なるほど、すれ違いになったというわけか。

それはそれで、むしろタイミング的によくやったと昨日の自分を褒めてあげたい。

あとほんの少しぐずぐずしていたら、病み上がりの水無月くんに捕まって振り回された挙句、彼は風邪をぶり返し、私は風邪をうつされて、二人仲良く学校を休む羽目になっていたかもしれないのだから。


「それはそれですごく残念だったんだけど、でもその帰りにね、部活中の同じクラスの人とか、廊下ですれ違った先生とかがね、僕を見てみんなして同じことを言うんだ」


やたら嬉しそうに笑っている水無月くんに、何だか私はとてつもなく嫌な予感がしてきた。

そこで一旦焦らすように言葉を止めて、頬を染めてえへへっと照れたように笑った水無月くんが、また嬉しそうに口を開く。


「瀬戸さんが、僕がいないせいで何だか調子が出なくて落ち込んでて、寂しそうにため息ばっかりついて、いつもの倍くらいぼんやりしていたって」


嫌な予感が的中した。それはもう、物凄く嫌な感じに的中した。

そんなことはなかった、いつも通りだった、むしろいつもより若干幸せだったくらいだと言ってやりたかったが、水無月くんはきっといつも通りそんな必死な私など気にも止めず、嬉しそうに笑っているのだろう。

それに、水無月くんがいない学校はいつもよりもつまらないと思ってしまったのも事実なので、あまり強く否定もできない。

でも、男女間でその言い方は、激しく誤解を招くような気がする。

何か言わなければと思うのだが、水無月くんの嬉しそうな笑顔を見ていると、浮かんだ言葉が声にならずに消えていく。


「僕もね、瀬戸さんに会えなかったからか、何だか調子が出なくて、ぼんやりしている時間が多かったんだよ」


自分も同じだったと言いたいのかもしれないが、水無月くんのそれは完全にただの風邪だ。


「こういうの、以心伝心っていうのかな」


絶対に違うと思う。

嬉しそうなところ大変申し訳ないが、水無月くんのはただの風邪の症状で、私のはただのみんなの勘違いだ。

ひょっとして今この瞬間クラスメイト達には、私が水無月くんの風邪が治ったことを喜んでいるように見えているのだろうか。

別に悲しんではいないが、特別喜んでもいない。

それを伝えたくても、いつも通りクラスメイト達は誰一人こちらを見向きもしないし、気にも留めていない。

だから、なんだかもう、いいかなと思った。

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