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「えっと……これは?」


またいつかの桃太郎ルールのように、わけのわからない独自のルールを突きつけられたらたまらないから、決して手は触れずに問いかける。


「うん!僕が瀬戸さんにあげたチョコチップメロンパン、あれにはね、このちょっとコーヒーの苦味が強めのコーヒー牛乳がよく合うんだ」


へーと気のない返事をしつつ、突然目の前に現れたコーヒー牛乳を見つめる。

私はそもそも牛乳はよく飲むが、コーヒー牛乳をあまり飲まない。


「合うのはよくわかったけど、でもなんで今?」

「えっ?」


何言ってるのとでも言いたげな顔で、水無月くんがこちらを見つめている。


「なんでって、瀬戸さんが放課後にチョコチップメロンパンを食べようとしていたから、それにはこれが一番合うんだよって教えたくて」


また、へーと適当な相槌を打ってしばらくしてから、ん?と首を傾げる。

放課後にチョコチップメロンパンを出していたのは、確か昨日の話だ。

でも昨日といえば、水無月くんは風邪で学校を休んでいたのだから、そのことを知っているはずがない。

首を傾げながら水無月くんの顔を見つめていると、ふふんと彼が得意げに笑った。


「なんで僕が昨日の瀬戸さんのおやつを知っているのか、気になる?」


正確には、私のおやつではない。

あれは、水無月くんに教えてあげようと思って買ったもので、今もまだ鞄の中に入っている。

でも今は、そんな細かいことを指摘している場合ではない。

もったいぶったように笑う水無月くんに、私はいつになく素直に頷き返す。

いつもとは違うその素直さに気をよくしたのか、「じゃあ特別に教えてあげよう!」なんて言って、水無月くんは嬉しそうに笑った。


「昨日はね、午前中ですっかり熱が下がって元気になったから、家にいても暇になっちゃったんだ。だから、せめて放課後だけでも楽しく過ごそうと思って、瀬戸さんを迎えにきたんだよ」


この男は……病み上がりでなんてことをしているんだ。


「でね、瀬戸さんが一人で教室にいたから声をかけようと思ったら、ちょうどおやつタイムみたいだったから。何食べるのかなーと思って見ていたら、この間僕がオススメしたチョコチップメロンパンだったでしょ。これは是非、このコーヒー牛乳のことも教えてあげなくちゃと思って、急いで買いに行ったんだけど、戻ってきた時にはもう瀬戸さん帰ったあとだったんだ」

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