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『瀬戸さん聞いて聞いて!この間ミケさんが黄色の首輪をしていてね、僕の知らない内にお嫁に行ったみたいなんだ。僕、花嫁の父の気持ちがよくわかったよ……。だから瀬戸さん、今日の放課後は一緒にミケさんのお祝いをしようね!』

『お嫁に行ったって……それただ野良が拾われて家猫になっただけなんじゃ』


『ねー、瀬戸さん!駅前にいわくつきの銅像があるの知ってた?エリーとマリーっていう女の子の像なんだけど、そのいわくが本当かどうか、今日の放課後検証しに行こう!』

『ええー、また?昨日も似たようないわくつきの銅像見に行ったばっかりなのに……』


『おはよう、瀬戸さん!昨日の帰りにすごく良いことあったんだよ、聞きたい?』

『……出来ることならホームルームが始まるまで寝かせて欲しいデス』


『ええー放課後に補習?なんで!瀬戸さんの放課後に、僕と一緒にUFO探しする以外の予定なんてないはずでしょ』

『UFO探すより先に、次のテストで赤点回避する方法を探すことになりました。先生と一緒に』


『はい。もう約束しちゃったからね、忘れちゃダメだよ!』


水無月くんに振り回されてきたこれまでの日々を、なんとなしにぼんやりと思い出していたら――


「おーい、瀬戸ちゃん。おにぎりの鮭がぽろぽろ零れてるぞー」


友人の声にハッとして視線を落とすと、スカートの上に盛大に鮭フレークが散らばっていた。


「ああ……!」


慌ててスカートの鮭フレークを拾い集めると、ティッシュを広げてそれで包み込む。

思い思いに机にお弁当やら菓子パンやらを広げて昼食中の友人達は、みんなしてそんな私を意味ありげに見つめてくる。


「やっぱり水無月くんがいないと、調子が出ないんだね。瀬戸は」


断じて違う。

今日一日、私が何かやらかすたびに、全てが水無月くんの不在へと結び付けられるが、それは絶対に違う。

でも何度言っても「はいはい」と適当にあしらわれてちっとも聞き入れてもらえないから、私もいい加減諦めた。


「今頃水無月くんも、ベッドの上で熱に浮かされながら瀬戸ちゃんのこと考えてるかもよー」


語尾にハートマークがついたそのセリフは、明らかに私の反応を見て楽しもうとする魂胆が見え見えだったから、さらっと聞き流しておにぎりを頬張る。

具のなくなったおにぎりは、思っていたよりもずっと味気ない。

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