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もちろん私の予想通り何時間待っても幽霊など現れず、下校時間をとっくに過ぎて見回りに来た教師に見つかった私達は、問答無用でお説教をくらい校門まで強制連行された。
「あれは、時間がよくなかったのかなって思ったんだ。幽霊さんだって、タイミングってものがあるでしょ?やっぱり、四時四十四分四十四秒に訪ねるべきだったんだよ!」
真剣な顔をして、とんちんかんなことを語る水無月くんに、返事の代わりにあくびを返す。
昨日は、出来るだけ暗くなってから行った方が会えるに違いない!と自信満々だったくせに。
「あれ、瀬戸さん眠いの?」
珍しく水無月くんが私の様子を気にした。
でもそんな珍しさを気にする余裕もないくらいに、今の私は眠い。
昨日学校を出たあとに、どうしてもそう次郎に会わせたいという水無月くんに引っ張り回されて、どこにいるかもわからない犬を捜して街中を歩き回った挙句に、家に帰ってから終わらない宿題と夜中まで格闘していれば寝不足にもなる。
「水無月くん、宿題全部終わったの……?」
訊くまでもないことを訊いてしまった私は、余程眠気がピークに達していたのだろう。脳の働きが鈍くなるくらいに。
「宿題?ああ、数学と英語の時間に出たプリントと、あと現国のワークだっけ。うん、もちろん終わったよ!家に帰ってから三十分もかからずにぱぱっとね」
私はその倍以上の時間をかけてようやく終わらせたというのに……。屈託のない笑顔が憎たらしい。
でもよく考えれば当然のことだ。
何しろ彼は、変わり者であることを抜かせば、学年一の秀才なのだから。
これが学年一位とか、二位の人がとんでもなくかわいそうではあるけれど。
「……訊いた私がバカでした」
疲れたような声で呟いて、再び机に顔を伏せる。
寝不足でぼんやりする頭に、机の冷たさが気持ちいい。
このまま、朝のホームルームが始まるまで寝ていたい……。
「せーとーさーん!寝る前に僕の話を聞いてよー」
そっと目を閉じた瞬間に、机が激しくガタガタ揺れた。
地震と間違えるほどの激しいその揺れに慌てて顔を上げれば、唇を尖らせた水無月くんが、拗ねた子供のような表情で机を揺らしている。
鬼だ……ここに残念なイケメンの鬼がいる……。
仕方なくゆらりと上体を起こして机に頬杖をつくと、そこに顎を乗せてふらふらする頭を支える。
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