6 最高に自由で

「おはよう瀬戸さん!今日の僕はチョコチップ入りメロンパンを食べてきたから、最高に元気だよ」


朝からやたらハイテンションな水無月くんに、ややうんざりしながら机に伏せていた顔を上げる。


「おはよう水無月くん……。元気そうで何よりだけど、水無月くんメロンパンは苦手だって言ってなかった?」

「うん、苦手だよ!メロンパンはね」


いつも通り、自分の席でもないのに当たり前のように隣の席に座ってこちらを向いた水無月くんが、満面の笑顔で頷いてみせる。


「メロンパンはメロンの味がするから苦手なんだ。でも、今日のはチョコチップが入っていたから」


今日も爽やかに笑う水無月くんは、顔だけ見ればただのイケメンだが、言っていることはとても残念な、いわゆる残念なイケメンっぷりを存分に発揮している。

メロンパンはメロンの味がするから苦手だと水無月くんは言うが、彼はフルーツのメロンなら食べるのだ。

それなのにメロンの味がするから苦手だというその理屈がよくわからない。

まあこれに限らず、彼の言うことや考えていることは九割方よくわからないけれど。


「でもメロンパンはメロンパンなんでしょ?」

「うん、チョコチップ入りのね」


そもそもメロンパンって、そんなにメロンの味がするだろうか。

メロン果汁を生地に練り込んでいます!みたいな謳い文句の商品ならばするのだろうが。

とりあえず水無月くんは、メロンパンが苦手だと言いながらチョコチップメロンパンを買うくらいなら、ただのチョコチップパンを買えばいいと思う。

朝っぱらから水無月くんとメロンパン論争を繰り広げるつもりはないので、言わないけれど。

理由はさておき、水無月くんが今日も自由でご機嫌であることは何よりだ。

それに私は現在、とても重大な問題に直面していて、正直それどころではない。水無月くんどころではない。


「そうだ瀬戸さん!僕ね、昨日の反省点を家で考えてみたんだけど――」


昨日といえば、半ば強制的に水無月くんと二人で放課後のトイレに幽霊探しに行ったことを思い出す。

放課後で、しかも誰も人がいないのをいいことに、水無月くんは女子トイレに堂々と足を踏み入れて、大声で何度も幽霊を呼んでいた。

でもいくら名前がわからないからって「幽霊さーん!」はないと思う。それで出てきたら出てきた方もどうかしている。

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