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ハッとして目を見開く水無月くんは、大げさなほどに辺りを見回し、ふるふると震えながらまたこちらを見つめる。
「瀬戸さん……」
余程怖いのか、水無月くんは固い表情で私を凝視する。
これは、声を出したのは私だと教えてあげるべきか……と口を開きかけると
「瀬戸さん!!」
突然カッと目を見開いた水無月くんに、両手で包み込むようにして強く手を握り締められた。
「ついに僕、幽霊の声が聞こえるという特殊な力が備わったみたい!」
目をキラキラさせて、欲しかった玩具を買ってもらった子供のように喜びをいっぱいに表す水無月くんに、しばらくの間脳がフリーズしたように動かなくなった。
「いやあーそろそろそんなパワーが身についてもいいかなって思っていたんだ。これで動物さんだけじゃなくて、幽霊さんともお話出来るね!どうしよう、お友達すっごく増えちゃうなあ」
えへへと笑って嬉しそうに頬を染める水無月くんは、握り締めた手を大きく振って喜びを表す。
「この世紀の瞬間に、瀬戸さんが立ち会ってくれるなんて嬉しいな。もしも素敵な幽霊さんとお知り合いになれたら、瀬戸さんにも紹介してあげるね!」
楽しそうな水無月くんの声を聞きながら、されるがままに握られた手を振られていると、次第にフリーズした脳が機能し始め、どっと疲れが押し寄せてきた。
「あっ、そうだ!せっかくだから、放課後に三階のトイレに行って噂の幽霊さんに会ってこようよ。みんなはすごく怖がっているけど、きっと話してみればそんなに悪い人じゃないと思うんだ」
「ねっ、いいでしょ?」と顔を寄せてくる水無月くんから逃げるように距離を取って、掴まれた手をそっと抜き取り前を向く。
まだホームルームも始まっていないのに、これ以上疲れてしまったら今日一日体が持たない。
「私、別に興味ないから。水無月くんお一人でどうぞ」
「大丈夫!興味はあとからだってついてくるよ。それとも、何か予定でもあるの?」
前に回り込んで顔を覗き込もうとする水無月くんを避けて、今度は顔を横に向ける。
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