1-3-2
坊ちゃん刈りのその男は20代半ばくらい。
金がかかった華美な服装だが、あまり似合っていない。
男は圭太たちを見まわすと、両腕を広げて話しかけてくる。
「異世界人の方々、ようこそ王国へ。僕は由緒正しき王国貴族のボボンと言う。以後、よろしくお願いするよ、ええ」
男――ボボンが礼をしてから、
「今回、わざわざ僕が足を運んだのはね、ええ。君たちに忠告してあげようと思ったからなんだ、ええ」
圭太は胡散臭げにボボンを見る。
4人を代表して詩織が聞く。
「……忠告ですか?」
「いかにも。君たちは異世界人だからさ、監視下に置かれることになったんだよ、ええ。本当は僕がやる予定で、立候補もしたんだけどね、ええ。国王陛下がソルトのヤツを指名してしまったんだ、ええ」
「……ぁ」
向こうのソファで亜美が小さい声を漏らした。
ソルトという名前に反応したように見えたが、そんなわけないよな、異世界に来たばかりで知り合いなんているはずもない。
ボボンが続ける。
「ソルトのヤツはそりゃあもう酷いヤツでさ、女癖が悪くてね、ええ、女を食い物にする常習犯なんだ、ええ。――おっと、そこのメイド、僕が間違っているというのかな? き・ぞ・くの、この僕が、ええ」
「……」
メイドのお姉さんが無言で頭を下げる。
しかし、圭太はそんなこと気にしてられなかった。
俺たちが監視下に置かれる?
女癖の悪いヤツの?
「僕が忠告したいのはそのことでね、ええ。ソルトは監視を名目にして君たちに近づくつもりだ、ええ。貴族の僕から見ても、お嬢さんたちは美しい、ええ。本当に美しい、ええ。だから、ソルトにはくれぐれも注意してくれたまえ」
ボボンはそれだけ言うと応接室から出て行った。
圭太はボボンの言葉を反芻する。
彼の頭には女癖の悪いソルトという図式がしっかり刻み込まれる。
なんてヤツをよこすんだ、この国の王は。
無能なのか?
せっかく夢にまで見たハーレムをいいようにされてたまるか。
俺が里奈たちを魔の手から守ってやる!
圭太がそう鼻息荒く意気込んでいると、再びノックの音。
入ってきたのはまたも男だった。
かなりのイケメン、勲章のついた軍服姿が様になっている。
年は若く、ボボンと同年代くらい。
まさか、こいつが――と圭太は警戒メータをぐんと引き上げる。
男が何かを言う前に、先手必勝、圭太が問う。
「あんたがソルトか?」
「……ああ、私がソルトだが」
「聞いたぞ、俺たちはあんたの監視下に置かれるらしいな」
「は? 監視下?」
「とぼけたってムダだぞ。ちゃんと知ってるんだよ。あんたが女癖が悪いって話もな!」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ」
男――ソルトがこっちに近寄って来ようとする。
圭太は立ち上がり、ソルトの行く手を阻んだ。
「おっと、里奈たちに何をするつもりだ」
すると、ソルトは両手のひらを見せて、一歩二歩と下がる。
「何か誤解があるみたいだ。まずは私の話を聞いてくれ」
ソルトがこちらをまっすぐ見て訴える。
そこで圭太は――
+++++++
(選択肢)
1.話を聞く
2.追い返す
=>「2」を選択
+++++++
ソルトを「追い返す」ことにした。
イケメンには絶対、負けないぞ。
自分がモブ顔だから当たりが強くなっているのではない。
ないったらない。
「分かった。また、明日にでも話そう」
ふん、明日なんかねーよ。
圭太はソルトを部屋から追い出すことに成功する。
ハーレムを守るのはオスの務め。
やりきったと、額の汗をぬぐうのだった。
+++++++
(リザルト)
・神崎詩織の好感度が下がりました。
+++++++
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