1-3-1(石川圭太)
王城の応接室。
素人から見ても高そうな調度品が飾ってある。
石川圭太はそこのソファに座っていた。
さっきまで事情聴取を受けていた。
といっても、圭太に語れることは多くない。気づいたらあそこにいたとしか言えないからだ。
あとは氏名と自分が高2であることを言ったくらい。
今は事情聴取が終わり、休憩中である。
「どうぞ」
ティーカップがテーブルに置かれる。
圭太は平然と礼を述べながらも、内心は興奮しっぱなしだった。
なぜなら、メイドが給仕してくれているからだ。
それも、ホワイトブリムとエプロンドレスを装備したヴィクトリアンタイプ。おばさんじゃなくて、20才そこそこな綺麗なお姉さん!
メイドカフェのアルバイターとは全然違う綺麗な所作!
いやー、異世界に来たかいがありましたわー。
圭太がしみじみとしながら紅茶をすすっていると、
「ぐぼぉっ」
いきなり脇腹に肘鉄が飛んできた。
圭太がむせながら、下手人である隣に座る人物を睨みつける。
幼馴染みの佐々木里奈が冷ややかにこっちを見ていた。
「なにすんだよっ」
「メイドさんを見過ぎ、失礼でしょ」
「み、見てないし」
「見てたじゃない、キショい感じで」
「キショ……っ」
クリティカルヒット! 圭太は999のダメージを受けた!
「ま、まあ、あれだ、里奈もメイド服とか似合いそうだよな」
「は?」
圭太は話題転換に失敗した! 逃げ出した・・・
気まずくなっので視線をそらす。
もう一方のソファ、神崎詩織と市村亜美が並んでいる方を見る。
詩織は1年先輩とは思えないくらい美人で大人びている。今も優雅にティーカップを傾けている。どこぞのお嬢様にしか見えない。
実際、詩織は神崎グループという大企業の社長の一人娘である。
そんな詩織のカップを持つ手とは反対の手を見て、圭太は首をひねる。
そこには隣の亜美の手が握られていた。
亜美もそれを受け入れている様子。
女の子同士の百合的な触れあいか? キマシタワー?
でも、ギスギスしているより全然いい。
ギスギスハーレムなんて胃の痛いのはご免である。
……あ! ハーレム!
すっかり忘れていた、ここが異世界ってことはハーレム作れるじゃん、もう3人の中で誰を選ぶかで悩まなくていい、みんなまとめてみんな俺の嫁! ひゃっほい!
まあ、動き出すのはちゃんとこの国が重婚可能か確認してからにしよう。
「お代わりおつぎしましょうか?」
メイドのお姉さんがちょこんとティーポットを掲げて聞いてくる。
なぁにそれぇ、かわいい。
ハーレムには専属メイドがマストだと思います。
あとはラノベの異世界召喚ものだと王女ヒロインが鉄板。
そして、今現在いるのは王城。
王女の一人や二人や三人くらいいるはずである。
会いに来てくれないかなー。
圭太がまだ見ぬ王女に期待した時だった。
応接室の扉がノックされた。
「キタっ!」
圭太が思わずソファから立ち上がる。
そして、扉が開かれ入ってきたのは――坊ちゃん刈りの若い男。
圭太はすとんとソファに腰を下ろした。
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