第4話

はぁ…ミケに置いていかれた…


「おーい!どうした!?」

落ち込んでいる様子に気付いたのか門番が走りながら近づいてくる

デカいな、どこぞの征服王かよって感じだ


「仲間?家族?に置いていかれまして」


「さっきチラッと見えたが仲間ってケットシーのことか?」


「ケットシー?かは分かりませんがそうですね…」


「そうか…それはなんて言って良いか、まぁ喧嘩別れって訳じゃないんだろ?また会えるさ!元気出せ!」


「お気づかいありがとうございます、あのー、私は神石投也と申しますが、貴方は?」


「おっと、自己紹介がまだだったな、俺は門番のアイゼンだ!お前さん転移者だな?」


「え?」

ヤバイ!バレて大丈夫なやつか?

逃げるか?


「身構えないでくれ、服装と顔を見れば大概の者は気付くさ、それに転移者はそんなに珍しくないしな!」


「え?転移者が珍しくない?」


「そうだ、年間何人も来るからな、多い時は集団で来るし、今週はお前さんで2人目だしな!」


「転移者多くない!?」

いやいや!過去何人かいるだろうと思ってたけど!

今週2人目とか!!


「ガハハハ!皆そう言うんだよな!とりあえず中に入ってくれ!」


「はい…」

なんか思ってたのと違う…



■兵士詰め所■

「座ってくれ」


「はい、それでさっきの話し本当なんですか?」


「さっきの?あぁ、転移者の話か、本当だぞ、詳しくはギルドで説明を聞くことになるから、楽しみにしときな」


「はぁ、ギルドで説明ですか?」


「決まりなんだよ、各国には転移者や転生者が多く出現するスポットがあるんだよ、この国ではこの町がスポットになってるって訳だ」


何、そのスポット!

観光スポットか何か?


「仕事の引き継ぎは終わったし、ギルドに連れてってやるよ」


「ありがとうございます」

とりあえずギルドに行くしかないかぁ


「そう言えば、名前は神石だったか?」


「そうですね、苗字が神石で名前が投也です」


「そうか…身内に神石剣磨って人がいたりするか?」


「祖父ですね。それが何か?」


「マジかよ!宝石の勇者様の孫かよ!ハハッ!そうか!こりゃ皆驚くぞ!!じゃあ、あのケットシーは神獣ミケランジェロ様か!?すげーな!投也!何か有れば言ってくれ!出来る限り力を貸してやる!!」


爺ちゃん有名なんだな、それにしてもミケが神獣?

そんなに威厳は感じなかったんだけど…

でも何でこんなに良くしてくれるんだ?

「何で力を貸してくれるんですか?」


「俺が新兵の時にお世話になったんだよ。勇者様がいなかったら俺等は死んでただろうからな、多少でも恩返しをしたい訳だ!それで勇者様は元気か?10年位前から話を聞かなくなって心配してたんだ」


爺ちゃん好かれてたんだな

ん?10年?時間軸が違うのかな?

「祖父は少し前に亡くなりました」


「そうか…それは残念だ、辛いことを聞いて悪かったな」


アイゼンさんが目頭を押さえて涙を堪えている

本当に悲しんでくれているのが分かる

「気にしなで下さい。気持ちの整理はついていますから」


「強いんだな、よし!ギルドでの説明が終わったら飯を奢ってやる!!」


本当に良い人だ

「ありがとうございます」





■ギルド■

「着いたぞ!ここが総合ギルドだ!」


ギルドが5階建てビル!?なんかイメージと違う

町並みも中世ってよりは、現代に近いな

「おー!あれ?総合ギルドってなんですか?冒険者ギルドと違うんですか?」


「総合ギルドってのは、冒険者、商人、薬師、錬金術、鍛冶の5つのギルドが統合されている施設だな、村とかだと個別になっているケースもあるがな、それより入るぞ!」


アイゼンさんに促されギルドに入る

「え?」

窓口が複数あって市役所とかみたいな感じだな…

異世界感が薄い、冒険者の格好はイメージ通りなんだけど、建物の雰囲気とミスマッチだ…


「そんなに変か?皆そんな感じの顔をするんだが」


顔に出てたかな

「まぁ、少しイメージしてたのとは違いますね」


「そうか、とりあえず受け付けに行くぞ」


「分かりました」

何か冒険者の人にチラチラ見られているような

あれか、アイゼンさんの声がデカいからか?


冒険者受け付けと書かれた窓口に移動する

「おう!お疲れさん!ギルマス呼んでくれるか?」


「アイゼン団長お疲れ様です。ギルマスですね、えーと、今は予定が無いはずなので直ぐにお呼びします」

綺麗な人だなー、ブロンドのロングヘアー、目も大きく胸部装甲も中々で御座います

少し年上かな?


「ん?団長?アイゼンさんって団長なんですか!?」


「あ、言い忘れてたな!」

アイゼンさん良い人だけど、俺何か失礼な事してないか?大丈夫か?

団長だから皆注目してたのかな?


「役職なんて飾りだ。気にするな!ガハハハ!」

いや、多少気にするし


「アイゼン、呼びだしなんかして、何かあったのかい?」

見た目、50代って感じでブラウンに白のメッシュが入った細身で如何にも仕事が出来るって感じのナイスミドルなオジサマが受け付けの奥から来た


「お!ギルマス来たか!実は紹介したい奴がいるんだよ!」


「紹介したい奴?そこの彼かい?見たところ異世界の転移者のようだが、受け付けでの手続きでは駄目なのかい?」

やっぱり転移者って分かるんだな


「そうだ。こいつは投也って言うんだが、少し訳ありでな、出来れば個室で頼む」

周りに聞こえないように小声で言ってるけど、十分目立ってますよ!アイゼンさん…


「ふむ、分かった、ついてきてくれ」


ギルマス、アイゼンさんの後に続き奥の個室に移動をすると、何か応接室って感じの部屋に通された

室内はローテーブルに革張りの黒ソファが置かれているだけのシンプルな作りだな


「座ってくれ」


「はい、失礼します」


「まずは自己紹介からかな、私は『はじまりの町』総合ギルドのギルドマスターイヴァンと言う、そこのアイゼンとは昔馴染みだ。君は若いのに中々礼儀正しいようだね、そんなに気を張らなくても大丈夫だよ」

はじまりの町?ゲームかよ!


「それじゃあ、俺も改めて自己紹介するか、はじまりの国ファース王国第二騎士団、団長田中アイゼンだ!改めてよろしくな!」


「田中!?」

てか、騎士団長!?


「やっぱり驚くか!俺は転移者のクウォーターなんだよ!ガハハハ」


「なんだ、彼に言ってなかったのか?」


「普通の転移者なら別に言わなく良いかと思ってたんだよ、投也が普通じゃないから今、言った訳だ!」


「はぁ、昔からガサツさは変わらんな、君大丈夫かい?アイゼンが普通で無いと言う訳を知りたいから自己紹介をお願い出来るかな?」


おっと、フリーズしてたわ

「はい、大丈夫です。私は神石投也と申します」


「ッ!?神石!?まさか!宝石の勇者様の!?」

驚き立ち上がるギルマス


「その、まさかだ!投也は勇者様の孫だ、それと勇者様は亡くなったそうだ」


「なんと…」

今度は腰が抜けたようにソファに座り込んだ



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人物紹介

田中・アイゼン 49歳 210cm 130kg

ファース王国第二騎士団長

フェ〇トのイスカンダルを彷彿とさせる風貌で見たまんまのパワーファイターだが騎士団長だけあって只の脳筋では無い。



はじまりの町

転移者が多く訪れることから、初代国王(転生者)と初代冒険者ギルド本部グランドギルドマスター(転移者)にて命名された。

町となっているが、重要拠点として発展しており辺境ではあるものの都市と言えるレベルの規模となっている。

癒着横領防止の為、領主は3年毎、騎士団は2年毎に入れ替えが行われている。

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