第117話 第5層界deフェス?
ノマド・キャンパーのリーダーであるビリーが俺を呼んでいる。
「おい、ハチ王子、また日本人がきたぞ。仲間か?」
まだ仲間っていたっけ?
誰だろう。
ハヤブサが呼んだのかな。
「あああ、間に合ってよかった!! 走って来ちゃいました」
ハヤブサが配信のカメラを、今やって来た日本人に向ける。
「ハチ王子、君の知り合いかい?」
「え?ハヤブサさんが呼んだんじゃないの?」
「わたしは知らない」
その日本人男性に近づき、誰なのかよく確認してみると、記憶がよみがえった。
「あああー!あの時の。奥さんが産気づいて急いで病院に行った人ですよね」
「その節はどうもありがとうございました。無事に男の赤ちゃんが生まれました」
「よかった。おめでとうございます!
あ、ハヤブサさん、俺はこの人を知ってます。
奥さんが産気づいたからって急いで走っていたところを、たまたま俺がドラゴンに乗って通りかかって、ダンジョンの出入り口まで乗せた人です」
狩野が男の人を見て叫んだ。
「どこかで見たことある人だと思ったら、
この人仙台では有名なプロのミュージシャン、ズンダさんだよ」
「あ、バレました?
ユズリハ・チャンネルを見ていたらここが映って、
あの時ドラゴンに乗せてくれた人が
ハチ王子と知ってびっくりしました。
それに、みんなで楽しそうに歌を歌っているし、ノマド・キャンパーの人たちの話にも心を打たれました。
で、わたしも参加しようと思って急いで来たんですけど…………
でも、もしかしてもう終わりですか?」
「ちょうど今、照明を設置したところだから、まだやりますよ。
ね? ハヤブサさん」
「コロニーのリーダーはどうなんだろう。大丈夫かい」
ユズリハがビリーに事情を説明しに行った。
ビリーは楽しそうに、こちらに向かって
「そろそろ、キャンプファイヤーを炊こうと思っていたところさ。
ミュージシャンなんだって? ぜひ演奏が聴きたいね。
ただ、もう料理が底をつきそうなんだが、いいかね」
俺と狩野は互いの顔を見た。
「聞いたか狩野、お前のアイテムボックスに、まさかトウモロコシなんか入っていないよな」
「なんで? そんなものをアイテムボックスに、入れるわけ…あるでしょう!」
狩野はアイテムボックスから俺の畑から収穫してきたトウモロコシをドサドサと出した。
「俺もーー!!」
俺も、アイテムボックスからトウモロコシを山ほど出して見せると、
ハヤブサがあきれ顔で言った。
「君たち、アイテムボックスの使いかたが間違っているぞ」
「お兄ちゃん、怒らないで。
こういう平和的な使いかたって素敵だわ。
武器や魔石を入れるだけじゃないのよ。
アイテムボックスの新しい使いかたよ。ね、ハチ王子」
「桜……じゃなくて姫、俺にとっては新しくない。
以前から普通にやっていたことだけど」
久しぶりに、桜庭を姫と呼んでみたら、桜庭は言い返しながらもポッと頬を染めている。
「何よ。せっかくフォローしたのに、バッカじゃない?
台無しじゃない……変なの!」
仙台から来たミュージシャンは大きな荷物をビリーに差し出した。
「あの、これをよかったらみなさんでどうぞ。
仙台のずんだ餅です。とりあえず、買えるだけ買って持ってきました」
ビリーは喜んで、トウモロコシとずんだ餅を受け取った。
「地上では富める者と貧しい者の格差がどんどん広がって
住みにくくなってしまった。
ここでは、みんなで持ち寄って食べ物を分かち合うことができる。
分かち合えば、一人分よりも何倍もの満足感と幸福感に満たされるんだよ」
そして、広場の中央にキャンプファイヤーが灯され、
広場は、野外ステージ会場に変身した。
さあ!
ズンダさんライブステージの準備は整った。
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