第118話 第5層界deフェス?―2
仙台では有名なプロのミュージシャン、ズンダさんはギターを持って登場してきた。
「皆さん、こんにちはー!」
「こんにちはー」
「こんにちは!」
ノマド・キャンパーたちが、ズンダさんのあいさつに応える。
「伊達ズンダと申します」
「ズンダー」
「ヘイ、ズンダ!」
伊達ズンダは、この第5層界に来て初めて他の探索者と交流できたと語った。
「このダンジョン第5層界でいろんなことがありました。
ここでの思い出を曲にしてみたので、
今日は皆さんにぜひ聴いていただけたらと思いまーす」
「おー、がんばれー」
「落ち着いて弾けよー」
ギターの前奏が始まる。
ギターの次に、ハーモニカの演奏が入った。
コロニーのみんなはハーモニカに聞き入って静かになった。
♪
何もないところから始まった
何もないところで出会った人たちと
新しい世界を作っていく
本当は何もできなかったんだ
いつも逃げてばかりいたんだ
でも、ここで出会った人たちと
新しい思い出をつくっていく
ここで出会えてよかった
あなたに会えてよかった
だから伝えよう
ありがとう
そして また会おう
明日も明後日も、ここで会おう
♪
伊達ズンダがこの第5層界のために作った曲だった。
ユズリハ・チャンネルを見て、急いでここまでやって来たと彼は言う。
ずんだ餅を山ほど買ったのも、ここに来るまでの間に速攻で作詞作曲してきたのも、
ここにいる探索者たちのためだった。
彼が伝えたかった言葉が歌詞の最後に集約されていた。
曲が終わると、少し静かな間があった。
それから、パチパチパチパチと拍手と歓声が巻き起こった。
イェーイ!! ブラボー!!
「ありがとうございました。伊達ズンダでしたぁ。
ありがとう・・・ありがとう・・・」
彼はみんなに手を振りながら中央広場から退場した。
「素晴らしい」
「ありがとう!凄すぎる」
「こちらこそ、ありがとう!」
ノマド・キャンパーたちはスタンディングオベーションをした。
(888888888)
配信のコメント欄も拍手を意味する888888が並んでいる。
(よかったね。ズンダって知らないけど)
(888888888)
(感動したね)
(これ、フェス?)
(フェスのレベルだよね)
(マジで凄いじゃん、天才!)
(だって、プロのミュージシャンだってよ)
(プロのミュージシャンでも、ダンジョン探索するんだ)
(社会人が会社で勤めながら、ダンジョン探索するのと同じじゃね?)
(曲がいい。泣けた)
「記念にみんなで写真撮りませんか?」
ノマド・キャンパーの一人から提案があった。
「いいね!こんな機会はめったにない。今日は楽しい日だ」
「集合写真撮りましょうよ」
「写真が嫌な人は無理しなくていいよ」
「できれば、配信用のカメラに向かって皆さんで手を振りませんか?
この様子を見てくれたリスナーさんに感謝の意をこめて」
ハヤブサが提案すると、みんな快く承諾してくれた。
「OK、ハヤブサ、君が指揮を執ってくれ」
「まかせてください。
では、まずジュリア・チャンネルのカメラはあっちでーす。
ジュリア・チャンネルをご覧のみなさん、どうもありがとう」
「ありがとう!」
全員で手を振る。
「次に、ユズリハ・チャンネルのカメラ、こっちでーす。
ユズリハ・チャンネルをご覧のみなさん、どうもありがとう」
「ありがとう!」
また全員で手を振る。
「最後に、ハヤブサ・チャンネルのカメラは真上でーす。
ハヤブサ・チャンネルをご覧のみなさん、どうもありがとう」
真上かよ。
首が疲れる。
「ありがとう!」
最後にノマド・キャンパーのおじさんのカメラで記念撮影をした。
ビリーがフェスの最後をしめる。
「みなさん、今日はお疲れ様でした。
ハチ王子、君が俺に包帯をくれなかったら
こうして出会うこともなかった。
あのときの白い包帯は、
怪我だけでなく俺たちの心まで癒してくれたんだ。
これは奇跡だ。ありがとう。
ハヤブサ・パーティのみんなの活躍に期待するよ」
ビリーは俺に熱い抱擁をしてきた。
彼の胸板と腕は、熊みたいにデカかった。
実際に、熊にハグされたことはないが…
それから数日後、俺は本物のツキノワグマと魔物退治のクエスト指名をもらうことになった。
え? ツキノワグマって、ダンジョンと関係なくね?
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ここまでが、第3章 レベル999知らんけど でした。
いかがでしたでしょうか。
次回から、第4章 マタギの里 が始まります。
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