第64話 ドラゴンの住処―2

俺は、ドラゴンのほうを向きながら、静かに後退りした。


「ジュリア、大丈夫か? 桜庭も大丈夫か?」


「ええ、大丈夫。お嬢ちゃんが傷を癒してくれたみたい」


「ジュリアさんこそ、わたしを庇ってこんな傷を……ごめんなさい」


「ほんと、あんなにとろくてよく探索者が務まるわね。

と、思ったけど、あんたの能力はヒーリングだったのね」


俺はジュリアの手からリボルバーをそっと取って、


「ここのドラゴンは、めったなことがない限り、人間を襲わない。

武器はしまってくれ。

ドラゴンの立場からすれば、

自分の住処を荒らされた上に武器で攻撃されたんだ。

そりゃ、怒って当然だろう」


「少年は、ドラゴンと会話が出来るの?」


「最上君は、馬などの動物、魔物とも意思疎通ができるのよ。」


「いつもじゃないよ。意思疎通できないやつだっているさ」


「たとえば?」


「学校の先生とか」


「ウケるわ、何それ。わたしも意思疎通できない」


ジュリアは笑いながら立ち上がった。

そして、桜庭も立ち上がろうとしたところに手を貸していた。


「この世界のこと、よく知らなくて悪いことしたわ。

それにしても、あんたにヒーリング能力があったなんて。

たいしたものね。おかげで助かったわ」


「ジュリアさんこそ、あのときわたしを庇ってくれなかったらと思うと……」


「ここまで共にやりあったんだもの、抜けがけでも何でもありだからね。

早い者勝ちよ。いいわね」


ジュリアは桜庭に向かって握手を求めた。

桜庭はそれに応え、二人はしっかり振握手する。


「もちろんよ。わたしだって、ジュリアさんに譲ったわけじゃないからね。

ただ後腐れなくしたいだけよ」


彼女たちは笑顔で握手してから、それぞれの馬にまたがった。


こいつら、一体何を言い争っていたんだ。

そうかと思えば、笑顔で握手して、何が早い者勝ちなのか。

俺にはさっぱり意味がわからない。

帰り道をずっと馬に揺られながら考えてみるが、女子っていうのはわからない。


「ところで、少年。あの緑の玉は何だったの?」


「ああ、あれは畑にあったオオバだよ。オオバの香りがドラゴンは好きなんだ。

鎮静効果もあるしね」


「へぇー、ハーブにも詳しいんだ」


「親戚のおじさんから、畑で学んだ」


「ふぅーん、畑って面白いの?」


「そう聞かれてもな、面白いのは畑だけじゃないさ。

ほら、こんなところに生えている木だって、

その木になっている実だって、俺には面白くてしょうがない」


帰り道に生えている樹木の実を採ってみた。

他にも果物っぽいものがなっている木がたくさんあった。

その辺の実も採取して、アイテムバッグに詰め込んだ。


「そんなものを採ってどうするのよ」


「わからない。食えるかどうか試してみて、

ダメだったら他の利用方法を考える」


「ほんとに面白いのは少年だね。君は変わっているし面白い」


あきれ顔で笑ったジュリアに対して、わたしの方が知っているのよと言わんばかりに桜庭は主張する。


「最上君ってナチュラルなのよ」


「あんたの言う通りだけど、ナチュラルすぎるわ。好きだけど」


「あーー! わたしでもそんな言葉言ったことないのにぃ。

ジュリアったら、ずるーい!」


「言ったでしょ。抜けがけありだから」


ジュリアはマロンの腹を軽く蹴って、走り出した。

そのあとを桜庭はブチに乗って追いかけていく。

あの走ることが得意じゃないブチが、ジュリアの馬に遅れることなく走って行く。

桜庭の調教のおかげか?

ブチがあんなに早く走れるようになったことに俺は驚いた。


あれも桜庭のスキルなんじゃねぇか?




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