第55話 最上の館ー2

「魔法…使っちゃっていいんですか?」


「何を言ってるんだ。最上君はブラックダイヤモンドを手に入れたと聞いたぞ」


「すみませんでした。勝手に他のチャンネルに出て…」


「それはもういい。そんなことよりブラックダイヤモンドだ。

それで君はどんな魔法もつかえるようになったはず。

魔法を使えば、効率的に計画を勧められるぞ。

例えば、わたしの魔法で鉱石さえあれば、武器だって作れる。

それから、このトウモロコシの食べられない部分から

バイオマスプラスチックを作れば、ペットボトルができる」


「バイオマスプラスチック?」


「自然に還るプラスチックだよ。

せっかく快適化計画するのなら、

この環境をできるだけ壊さないような配慮をした方がいい」


「素晴らしいです!ハヤブサさん。それやりましょう」


「わたしの魔法を見て、君もやり方を覚えるんだ」


「教えていただけるんですか?」


「もちろんだ、ハチ王子と姫とカリノはわたしのパーティだからな」


「俺たち、ハヤブサさんのパーティに?」


「ああ、だから今後は勝手に他の配信に出演することは許さない」


あ、やっぱりあの事を根に思っている。


しかし、第5層界快適化計画にハヤブサの協力が得られるのは大きい。

俺は、ハヤブサの忠犬ハチ公になると決めた。


ハヤブサの参加で、小屋の周辺はみるみる整備されていった。

温泉を見てハヤブサは感心もしてくれたが、アドバイスもくれる。


「いいねぇー、温泉。

でも、温泉は水着着用にすること。

そうじゃないと、あずさが温泉に入れない。

それから、ちょっとだけ、石垣を組んで目隠しをつくること」


確かにそうだ。

今までは自分の事しか考えていなかった。

今後仲間で利用したりもし人が増えたりしたら、ハヤブサのアドバイスは的を射ていた。




「みなさーん、休憩しましょう!」


 桜庭あずさの声で、皆手を止めた。

婆ちゃんが差し入れてくれたランチボックスには、おにぎりや唐揚げなどがおいしそうに詰められている。

かまどでお湯を沸かせて、桜庭がお茶を注いでくれた。


「最上君のお婆ちゃんから、玄米茶を持たされたの。

井戸水を沸かして入れてみたんだけど、どうかしら」


「美味しいよ。ね、最上」


「ああ、美味い。

でも、贅沢なこと言えば冷たい飲み物が欲しかったなぁ」


俺の意見を聞いて、桜庭の目が悲しそうに潤む。

それに気が付いた狩野があわてて俺に小声で助言する。


「最上、お前は気が利かないな。またハヤブサさんにおこら…」


そうだった、狩野よく教えてくれた。


「熱いお茶だから美味いんです。

桜庭ってお茶の入れ方が上手だなぁ」


棒読み。

すると、ハヤブサは思いもよらないことを言いだした。


「最上君、良いところに気が付いたね。

せっかくだからミニ冷蔵庫と自動販売機も起動させよう。

魔法で水筒を作って冷やしておけば、いつでも冷たい飲み物が飲める」


桜庭あずさの方は大丈夫かと、俺はチラッと顔色をうかがう。


「お兄ちゃん、それ早く言ってくれればいいのに」


泣くのかと思ったらハヤブサに不満をぶつけてきた。


「ごめん、ごめん。そうだね、もっと早く思いつけばいいのにね。

ランチを食べたらすぐ取り掛かるからね。」


助かった。


「ところで、どうして自動販売機を持ってきたんだい?」


「それは、今後ここに人々が来るようになったら、これで商売できるかと思って…」


「なるほど、抜け目ないやつだな、最上君は」


「最上、この家に名前つけようよ」


狩野が提案した。


「え、『小屋』でいいよ」


「それじゃ、味気ないじゃん。僕ならこう名付けるね『最上もがみ館』やかた


「狩野君、それはダサい。わたしならもっとおしゃれな名前をつける」


「お兄ちゃん、わたしも考えていい?」


「いいよ、素敵な名前をこの家につけようね」


俺が作った小屋なのに、俺をほったらかして、皆で盛り上がっている。

でも、これからは仲間と一緒に整備していくのだ。

『俺たちの小屋』でいいかもしれない。


笑いながら狩野は板にマジックで何やら書き始めている。

へたくそな字で『最上もがみやかた』と書いてあった。


「できた! とりあえず、看板だ」


「だっせーよ。よせよ、そんなの」


俺はその名前に賛同できない。

ハヤブサも同意見のようだ。


「狩野君、それは不採用だ」


「わかった、わかった、わかりましたよ!

この看板はここに立てとくから、あとでトイレの壁にでも使ってくれ」


「それじゃ、トイレが『最上もがみやかた』になるじゃないの。」


「そっか、それは困るな」


桜庭あずさのツッコミにみんなで大笑いした。



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