第2章 秘密のダンジョン第5層界快適化計画
第50話 小松先生に相談
第50話から第二章です。
【第二章 秘密のダンジョン第5層界快適化計画】は、第5層界が舞台の中心です。
戦闘シーンよりもスローライフ系の話が多いですが、
癖のある新しい登場人物が出てきて第三章へつながります。
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―ステイタス画面―
名前 :最上忍
ジョブ:実習生
ランク:C
レベル:27
ゴールドポイント:22760pt
*特別ミッション、クリアしました。
小安峡ダンジョンを攻略。おめでとうございます。
獲得アイテム:ブラックダイヤモンド(あらゆる魔法、使用可)
ステイタス画面を確認していた。
迷宮探索者としてダン技研に登録している者は、獲得した魔石を提出し、日々レベルアップに努めなければならない。
つい最近まで、ダンジョン探索はポイ活だと勘違いしていた俺にとって、その務めは重荷だ。
ランクやレベルが上がることにちっとも喜びを感じない。
数値が上がるよりも、ダンジョンで動き回る事そのものに喜びを感じているのに。
それに、一緒に探索できる仲間ができたことが何より嬉しい。
俺は、今まで通り俺流でやって行くつもりでいるが、それじゃダメなのかな?
教えて、誰か。
新しく来た臨時講師の小松先生なら、俺の相談に乗ってくれるかもしれない。
生徒指導室と書かれた部屋に、俺と小松先生は向かい合って座っていた。
生徒指導室って名前が、なんだか印象よくない。
まるで取り調べ室みたいだ。
「相談って何かね。最上君からわたしに相談なんて珍しいね」
「小松先生以外に、相談できる人がいないんです」
「どんなことでしょう。わたしが力になれることなら協力しますよ」
「あの、ブラックダイヤモンドもダン技研に提出しなくちゃいけないんですか?」
「ブラックダイヤモンドだって?
手に入れたんですか? 凄いですねぇ、一人で?」
「いいえ、東京校の先輩たちと一緒に」
「ああ、先日校門にいたブロッケンとユズリハですね。
三人でダンジョン探索して、君がブラックダイヤモンドを手に入れたということですか」
「いろいろ事情はありますが、結論を言うとそういうことです」
「……事情ねぇ。では、わたしも結論から言いましょう。
ブラックダイヤモンドを提出する必要はありません」
「え、いいんですか?」
「ご自分で持っていなさい。
ブラックダイヤモンドはあらゆる魔法を使えるアイテムですから」
「持っていていいんだ」
「ブラックダイヤモンドよりも問題は別にあるんですよ。
本当はね、最上君のレベルは上がっているだろうから、
ステイタス画面を読み取る必要があるのです。
するとまた文字化け配信者がランクアップしたってニュースになるでしょう。
今後、君がレベルアップするたびにランキングを公表するのは控えたいと思うんだ」
「いいんですか?そんなことして」
「本当はダメです。上に見つかったら……そうですねぇ、
君たちの言葉で表現するとヤバイってやつです」
「ダメだよ、そんなの。ちゃんと俺のステイタスデータを取ってください」
「実を言うと、これは君の父さんとも相談して決めたことなんです。
最上君の身を危険に晒すくらいなら、データは公表しないと決めたんです」
「父さんまで、ヤバくなるんじゃないですか」
「大丈夫です。全くデータを公表しないわけじゃないから。
毎週取っていたデータが三か月に一回程度に減るだけです」
「そうですか」
「それに、最上君はあまりランキングが好きじゃないでしょう。
数値でしのぎを削るよりも、探索そのものを楽しんでいるんじゃないかね」
「当たりです。それって、いけない事なんでしょうか」
「素晴らしい事です。最上君は本物の探索者だと、わたしは思いますよ」
「じゃ、今まで通りに探索していてもいいんですね。
そして、ランキングに文字化けが出るのは三か月に一度という認識であってますか?」
「そういうことです。
だから、心配しないで今まで通りに探索してください。
学生時代の経験は今しかできませんからね。
それに、もうすぐ夏休みじゃないですか。
自分がワクワクするようなことをどんどんやって、
楽しい思い出をたくさん作りましょう」
夏休み。
忘れていた。
夏休みに入ったら、自分がワクワクするようなことをたくさんやろう。
「ありがとうございました!」
生徒指導室を出た俺の頭の中は、ワクワクするようなアイディアで溢れていた。
秘密のダンジョン第5層界をもっと快適な空間にしよう。
友達を呼んで楽しく過ごせるような、俺たちの秘密基地みたいな場所に。
もし、他のダンジョンからやってくる人たちが増えたら、
喜んでもらえるような商売をして、将来は財を築こう。
ポイ活より面白そうじゃないか。
廊下を歩きながら妄想は膨らむ。
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