第49話 ブラックダイヤモンドー2
樹木の精霊で宝箱の番人、トレントとかいう化け物と戦ったあと、
ブロッケンにはブラックダイヤモンドを持ち去られ、気が付いたら結果無報酬だった。
残った力を振り絞って、トレントが残した魔石だけでも拾おうと地面に手を伸ばす。
「あいたたたた……」
ユズリハに向かってヨロヨロと歩いた。
「ハチ王子、ごめんなさい。こんなつもりじゃなかったの」
「何でもないよ」
ユズリハはカメラに向かって、リスナーに語りかけた。
「みなさん、ご視聴ありがとうございました。こんな終わり方になるとは予想していませんでした。お見苦しいところを見せてしまい…もう、この辺で配信は終わりに……」
「ちょっ、待った!」
俺は、ズボンのポケットから石を取り出して、ユズリハのリスナーさんたちに見せた。
(この石……、)
(魔石じゃないぞ。これは、ブラックダイヤモンド!)
(え? マジか? どうやって)
(ブロッケンから奪った?)
ブラックダイヤモンドは、俺の親指と人差し指の間で怪しい輝きを放っていた。
「ハチ王子、いつの間に! ブロッケンから取り返していたの?」
「ああ、運も悪いが手癖も悪いようで」
ブロッケンに猫だましと言われた技のとき渾身の一撃を外したふりをして、実は彼のポケットからブラックダイヤモンドをかすめ取っていた。
手に入れてしまえば、もう戦う必要はなかったのだが、念の為に演出用に回し蹴りする真似だけはしておいた。
さすがに、剣で咽を切られそうになったときはビビったが。
あとは、すぐに降参して、ブロッケンに立ち去ってもらえばいい。
そこまでが俺の策だった。
(こいつ、最高じゃん!)
(すげえ! ハチ王子かっこいいじゃん)
(ユズリハ、お願いだからこいつに惚れないでくれ)
ユズリハ・チャンネルのコメントが物凄い勢いで流れて行く。
(ブロッケン、ざまあ)
(今頃悔しがってるんじゃない?)
(いや、まだ取られたことに気が付いていないかもな)
(笑えるーww)
「てなわけで、ユズリハ先輩、これは報酬としていただいていいですよね」
「もちろんよ! みんなもOKよね。
……ほら、リスナーさんたちもOKって言っているわ。みなさん、ありがとうございます。
それでは、ここで配信は終了します。
あ、そうだわ。その前に、
またよかったら配信に出てもらえませんか?」
「それはちょっと……」
「マネージャーを通すんでしたね。ごめんなさい、直接交渉しちゃって」
「別に」
「おかえりーーー! 無事に帰って来てよかった」
「おう、自分でもそう思う」
そのタイミングで『大噴湯』が勢いよく噴き出した。
ビシュー!!!
「うわっ! これお湯じゃん。温泉が噴き出してんのか」
桜庭が急に叫び声をあげた。
「忘れたぁ!」
「何を?」
「田舎者と呼んだのを謝罪してもらうこと」
ユズリハが頭を下げた。
「わたしがブロッケンの分も謝るわ。
ごめんなさい。田舎者と呼んで本当に申し訳ありませんでした。
東北にもハチ王子みたいな素敵な人がいるのね」
「いや、俺、東京出身だけど…」
「え? そうなの?」
桜庭がどこから持ってきたのかピーっと笛を吹く。
「ハイ、お二人さん、そこまでぇ。
そこ、離れてください。仕事はもう終了しましたぁ」
「少しぐらい話したっていいでしょ。ケチ」
「ユズリハさん、ハチ王子にお姫様抱っこされたでしょ。
それも私の時よりも長く。
もう十分スペシャルサービスしましたから。
ここでタイムアップです。
ハチ王子には次のスケジュールがあります」
次のスケジュールって何だ。
俺は聞いていないぞ。
桜庭、適当なこと言うな。
「そうそう、次は畑仕事でーす」
狩野がそう言いながら手を挙げる。
「そうだった! 狩野よく教えてくれた。
俺、畑に行くんだった。
じゃあな。爺ちゃんの軽トラが待ってるから、俺は帰る」
「え、マジだったか。冗談で言ったのに……」
俺は残念な顔して見送る仲間を
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第1章 迷宮探索高等専門学校、東北分校 はここまでになります。
いかがでしたでしょうか。
次回から、第2章 第5層界快適化計画 が始まります。
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