第41話 出演交渉はマネージャーを通してー2

 桜庭が俺と狩野を睨んでくる。


桜庭は普段おとなしいが、怒らせると鬼より怖い。


「何の話よ。最上君は、配信に出たいの?」


「配信は苦手だし嫌なんだけど、ブロッケンの挑戦は受けたい。

だって、ブラックダイヤモンドを取りに行けるんだぞ。

こんな機会めったにないじゃん」


「ブロッケンたちに勝つ自信はあるの?」


「たぶん…ある」


俺たちの相談が長いことにしびれをきらしたユズリハが催促しはじめた。


「もう! いつまで待たされるのよ。

こんな田舎まで来て出演交渉に時間がかかるとは思ってなかったわ。

ハチ王子なんて単なる田舎の高校生くせに、

なんでマネージャーが付いているのよ。

しかも、ハヤブサの妹がマネージャー? 

バッカみたい。無駄足だったわ。ブロッケン帰りましょう」


「まあまあ、ユズリハ機嫌を直してよん。

田舎者には田舎時間というものがあるのよ」


その言葉は桜庭の逆鱗に触れた。


「田舎者と言ったわね。わかったわ!

その言葉を後悔させてあげましょう。

ハチ王子を配信に出演させます。

ただし、条件があります。顔出しNGです。

彼の顔にはAI認識で秋田犬のアバターをつけること。

名前はハチ王子とすること。

そして、ハチ王子が勝ったら田舎者呼ばわりを撤回し謝罪すること!」


桜庭……、俺またハチ王子になるのが条件かよ。

交渉成立にむけて話は進行していく。


「最上君、負けたら承知しないからね。絶対勝って謝罪させてよね」


「お、おう」


「僕も応援するからさ」


狩野、お前が桜庭まで巻き込んでこんなことになっているんだぞ。


「OK. その条件飲みますわ。いいわね、ユズリハ」


「いいけど。桜庭妹って、ハチ王子の彼女?」


「違います!」


きっぱりと否定している桜庭の顔が赤く見えるが、さっきの怒りがまだ収まっていないと俺は読んだ。


「ふーん、そう。姫っていうから、てっきりハチ王子と付き合っているのかと思ったわ」


「ないです、ないです。

マネージャーとして、恋愛はNGになってますし」


そんな話、聞いたことないぞ。

誰が決めたそんなこと。


「変な取り決めね。本当なの? ハチ王子」


おっと、急に俺に無茶ぶりしてくるな!

とりあえず、無難な答えを出すしかできない。


「恋愛とか興味ないんで。

わざわざNGにしなくても恋愛関係はありません」


なぜか、桜庭が心なしか悲しい表情をしている。

俺はお前の主張を援護してやったのに、そんな顔するな。


「ですってよ、マネージャーさん。特に取り決めは無いようね。

ハヤブサが勝手に姫と名前をつけただけ。

あなたはハヤブサがいないと存在薄いのね。

ハヤブサの傘の下で守られているだけよ」


それは違うんじゃないか。

桜庭がうつむいて泣きそうになるのをこらえているのがわかった。


「やめてもらえますか。人の悪口は嫌いだ」


「最上君…」


「あら、ごめんなさい。わたし言い過ぎたわ。そんなつもりじゃないのよ」


ブロッケンが見かねて間に入って来た。


「ユズリハ、やめた方がいいわ。

ここでハチ王子のご機嫌を損ねたら、企画倒れじゃないの」


狩野が収まりかけた論争に油を注ぐ。


「ユズリハさんはブロッケンと付き合っているんですか?」


「まさか。ハチ王子と配信するというからそれに乗っただけよ」


「カリノ君、あたくしにも選ぶ権利がありますわ」


「ちょっと待って。それはこっちのセリフよ!」


こうなったら、俺が止めるしかないのか。

面倒くさいな。


「あのう、話を本題に戻しませんか。

ダンジョン探索の場所と時間を、まだうかがってないんですけど」


「そうだったわね。そう、ブラックダイヤモンドがあるのは

『小安峡(おやすきょう)ダンジョン』の第3層。

土曜日の午前9時集合よ。報酬はブラックダイヤモンド。

早いもの勝ちよ。

悪いけど、あたくしがブラックダイヤモンドを手に入れた場合は、

君は無報酬でよろしくって?」


「わかった」


「案外、ききわけのいい子ね」


「よく言われます」


即答してみせたが、実は小安峡(おやすきょう)ってどこなのかさっぱりわからない。

いいか、狩野に教えてもらえば。

狩野が知らなかったとしても、爺ちゃんに聞けばわかるだろう。

桜庭もいるし何とかなるだろう。



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