第40話 出演交渉はマネージャーを通して
「買い物競争なら、秋の運動会にしてください。俺は興味ありません」
面倒なこと嫌い。
争いごと嫌い。
特に、ハチ王子と呼ばれる配信はもっと嫌い。
「あらあ、気になりませんの? ある物とは何かをまだ説明していないのに。
お帰りになるならしょうがないわね。
ユズリハ、ハチ王子はダメだわ。以外に軟弱者でした」
軟弱者と言われた。
このおれが軟弱者と。
「軟弱者と言われるのは不名誉です。
一応聞いておこうかな、そのある物の説明を」
「それは、ブラックダイヤモンドですわ。
どう? 食いつきたくなったんじゃない?」
残念、何それ。
ある物とはブラックダイヤモンドと聞いても、知識が足りない俺にはさっぱりわからない。
狩野に説明してもらわないと、どういう反応をすればいいかさえわからない。
小声で狩野に聞いてみる。
「おい、ブラックダイヤモンドって何だ」
「ダンジョンの秘宝と呼ばれるレアな宝石だ。
これを持つものは、いろんな魔法を発動できるらしい」
「それは高価なものか」
「時価総額は1億になるかと・・・」
俺はブロッケンにむけて、勢いよく手を挙げる。
「はい、俺です! 俺がハチ王子です。その買い物競争やります!」
「フフフ、素直ないい子だこと。
ユズリハ、いいわね、配信はあなたとあたくしのチャンネル同時配信で」
「もちのろんよ。わたしだってリスナーさんに見てもらいたいわ」
しまった。
配信するって言っていたのを、俺は忘れていた。
配信を断っても怒られないよな。
「あのすみませんが、配信はダメです」
「何をおっしゃるの? 配信しないとここに来た意味がないのよ。
ねえ、ユズリハだってそうでしょ?」
「わたしも配信できると思ってきたのよ。どうしてくれるの」
狩野が慌ててユズリハの機嫌をとろうと必死になった。
「違うんです。配信がダメという意味じゃないんです。
ハチ王子はいろいろと条件付きじゃないと難しいので、
そうだ! マネージャーを通してください。マネージャーを」
狩野が適当なことを言いだした。
俺にマネージャーなんかいたっけか。
「あらそうなの。まあ人気者にはよくある事だわ。
あたくしからマネージャーにお話しさせていただくわ。
そのマネージャーを呼んでくださる? 今すぐに」
「あ、はい。ちょっとお待ちください。
今すぐ呼びますんで・・・・」
狩野は携帯で誰かに電話しはじめた。
誰に電話しているのかわからないが、電話している狩野の背中から必死さが伝わってくる。
「狩野、マネージャーって・・・」
「桜庭しかいないだろ。こういう時は前回の配信を知っている奴しか頼れない」
数分後、学生寮の方から走ってくる女生徒は桜庭あずさだった。
息を切らしながら狩野に文句を言いはじめた。
「狩野君ったら、もう!
人をなんだと思っているのよ。急な配信ってなんなのよ」
「このあか抜けない女の子がハチ王子のマネージャーさんかしら」
桜庭はブロッケンとユズリハの存在に気が付いて驚いている。
さすがに桜庭には彼らが何者なのか、理解できたらしい。
「あら、ブロッケンさんとユズリハさん、
お初にお目にかかります。桜庭あずさと申します」
桜庭の自己紹介を聞いてブロッケンとユズリハは、ピンときたらしい。
「桜庭? あなたハヤブサの妹かしら」
「ハヤブサ・チャンネルで姫とよばれていたわね。
わたしよく覚えているわ」
「姫ですって? ホホホホ……
ハチ王子と姫ってなんのギャグなのかしら」
「お兄ちゃんがつけてくれたネームです。
ギャグだなんて失礼なこと言わないでください」
「おお、こわっ! そのお兄ちゃんっ子のマネージャーさんにお願いがあってきましたの。
そんなに怒らないでくださる?」
「マネージャー? 誰かしら」
狩野が必死に口パクと身振り手振りで、桜庭がマネージャーと言うことにして欲しいと伝えている。
「わたしが?……、マネージャーの桜庭ですが、なにか」」
「あたくしとユズリハのダンジョン探索配信にハチ王子をお借りしたいのです。よろしいかしら?」
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