第34話 ダンジョン探索技術研究所 田沢湖支部
翌日狩野に聞いて、ダン技研の田沢湖支部が学校の近くにあることを知った。
何しろ初めてのことなので、狩野に付いてきてもらった。
「このあいだ、アイテムボックスを教えたとき、
ずいぶん魔石を持っているんだなと思ったんだよ。
でも、まさか提出するのを知らなかったとは思わなかった。
全部提出したら、相当な金額になるんじゃないか?」
俺は「ああ」とだけ返事をした。
「どうした、浮かない顔して。報奨金がもらえるんだぞ」
「それは嬉しいけど、秘密のダンジョンの第5層界知っているだろ。
あの第5層界で魔石をエネルギーとして使っていたからな。
今後、どこからエネルギーを作り出そうかと考えていた」
「そこかよ!」
本当に落ち込んでいる俺を見て、狩野はあわてて言い直した。
「ごめん。最上にとっては大きな問題、いや、僕にとっても大問題だ。
あの第5層界は、僕も大好きだし僕たちの隠れ家だしな。」
「当面は、先日採集したスライムを干してあるから、
それで燃料は出来ると思うんだが」
「げ? そんなことしているの? スルメイカかよ」
*
ダンジョン探索技術研究所、略してダン技研に着いた。
田沢湖支部があるということは、県内には他にもあるのだろう。
ゲームでいうギルドみたいな所だと狩野は言っていた。
県内にはあと秋田市に秋田支部があることも教えてくれた。
受付で探索者IDを入力すると、別室に案内される。
なんだか病院みたいに無機質で、こういう雰囲気は好きじゃない。
調査室と書かれた部屋には、白衣を着た研究者が待っていた。
30歳代くらいのメガネをかけた男性だ。
ザ・研究者を地でいっている感じの人。
「名前と生年月日をおっしゃってください」
「え、あ、…最上忍…えっと、」
「緊張しなくても大丈夫ですよ」
「すみません。初めて来たので」
「みなさん、最初はそうですから。
では、この半球体に右手を置いてください」
言われるままに、ほのかに光っている半球体に右手を置くと、ブーンと低い音がした。
この機械でステイタス画面を読み込んでいるのだと研究者は説明してくれた。
これで、俺のレベルもポイントも魔石も全部のデータをダン技研に報告したことになる。
「魔石、ずいぶんとありますね。
全部提出していただいてよろしいですか?」
「いやだけど、義務なんでしょ」
「そんな、わたしたちは鬼じゃないですから睨まないでくださいよ」
「だって………、わかりました。全部提出します」
「はい、承知しました。
あと、ポイントも溜まってますよ。これも換金しますか?」
「はい、お願いします」
これは換金のためにポイ活していたのだから即答で了承する。
「それと、ゴールドも溜まっていますが、換金しますか?」
「えーと、……そうですねぇ、それはそのままでお願いします」
「わかりました」
ブーンという重低音が耳障りだ。
「はい、終了しました。報奨金等は、後日銀行口座に振り込みされます」
緊張した割には、あっけなく終わった。
調査室の外に出ると狩野が待っていた。
「お疲れー。どうだった?」
「あっけなかった」
「ハッハッハ、最上は緊張しいなんだよ」
ダン技研田沢湖支部を出て、思いっきり空気を吸い込んだ。
ああいう建物の中にいると窒息しそうになる。
やっぱり、俺は外で動き回っている方が性に合っている。
「なあ、狩野。行かないか?」
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