第16話 狩野からの電話

 今日は爺ちゃんの軽トラに乗って、親戚の農家まで野菜を取りに行く。


「忍、友達出来て、えがったなぁ」


「最近できた友達じゃないよ。あいつとは入学からずっと友達だから」


「今まで、家に誰も遊びに来ねぇがらよ、

爺ちゃんは忍が一人でダンジョン遊びしてるものだと思ってらった。

爺ちゃんはダンジョンの事をよくわからねぇども、

忍はダンジョンが楽しいが?」


「楽しいよ。去年、教えてもらったトウモロコシがダンジョンで立派に育ってる」


「ほ、畑仕事もやるなが」


「今度持ってくるよ」


「それは楽しみだ。出来が良かったらお客さんにも出そう」


軽トラが親戚の農家に着くと、おじさんに挨拶をして野菜を荷台に運び入れる。


「坊主、一度にそんなに持って大丈夫か? 重いだろ」


この作業も筋トレの一貫のつもりで、俺がいっぺんに何ケースも持ち上げる。

それを見ておじさんは驚いていた。


「平気です」


「たまげだ。なんという力持ちだ」


その時、携帯がブルっと鳴った。

狩野からだった。


「はーい、俺です。どうした狩野」

「今さ、桜庭から電話があってさ」


「なんで桜庭がお前の携帯番号を知ってるんだよ」


「それは、僕、一年前に名刺配っていた時期があって、

女の子には誰にでも名刺渡していたから・・・・、

って話はどうでもよくてだな」


「あったなそういう時期」


「その名刺を見て、桜庭が電話してきたんだよ」


「よかったじゃん。営業の努力が実ったわけだ」


「言いたいのはそこじゃなくて、

最上の電話番号を教えてっていうんだよ」


「ダメ、ダメ、個人情報だ。絶対に教えないで」


「もちろん、そう言って断った。

だけど、おまえの家に行くっていうんだよ」


「ペンション白鷺って教えたのか?」


「教えなくても知ってた」


「はぁ?」


クラスでは、寮に入らず自宅から通う生徒は目立つから、たいてい噂にのぼる。

特に俺の場合は、ペンションを経営しているので話題になっているのだと狩野は言った。


「今、家にいないから来られても困るんだけど」


「え? そうなの? 僕、道案内しろと言われて、

もう一緒に向かっているんだけど」


「待て、待て。桜庭が急にそんなに積極的に行動するとは思えない。

何か訳があるんだろ」


「大当たり! 

今、桜庭兄妹と一緒にそっちに向かってる」


桜庭兄妹?! あのハヤブサが俺に何の用だろう。

ペンションで決闘を申し込まれても困るのだが。

でも、妹が一緒ならそれはないか。


「忍、戻るべ」


爺ちゃんが軽トラのエンジンをかけて言った。


軽トラの中で、爺ちゃんは上機嫌に話しかけてくる。


「さっきの電話、友達だが?」


「うん、家に来るって。もう向かっているって」


「ほ、んだなが。へば、急いで戻らねば。

確か狩野君だっけが」


「うん、あともう二人増えた」


「ほ、三人で来るなが。えがったな、忍」


「いいんだか悪いんだか、まだわからないよ」


「何言ってる。悪い訳ねべ。

友達に会ったら、ちゃんとお礼を言うんだぞ。

今日は来てくれてどうもありがとうってな」



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