第14話 ハヤブサとの一戦―2

 地面を蹴り上げて駆けだした俺を狙って、ハヤブサの魔法は連続で飛んでくる。

パチッと指を鳴らすたびに飛んでくる何かの魔法。

ハヤブサの指先で何度も魔法の火花が弾けている。

これは、魔法弾だ。


パチッ、パチッ、パチッ・・・・


だが、俺には当たらない。

最速でジグザグに動き回り、魔法弾を避け、逃げ回るように見せかけて次第に距離をつめていった。

ハヤブサの表情に焦りが見え始める。


その時、俺はハヤブサの前に一歩を踏み出した。

ハヤブサはハッとし後ろに引いて俺から距離をとろうとしたが、その時にはすでに遅い。

俺は渾身の手刀を、魔法弾を放つ奴の腕をめがけて振り下ろした。


「ぐっ・・・・」


潰されたカエルのような鳴き声をあげて、ハヤブサは右腕を抑えて膝から崩れた。


「なかなかやるじゃないか」


「魔法弾って、素手でも出せるんですね」


「あらゆる攻撃を想定できないとわたしには勝てないよ。

こんなのは初歩中の初歩だ」


「まいったなぁ」


まだやる気なんだ、このお兄さん。

先生も誰も止めないから、攻撃するしかない。

やってらんねぇな。

俺は愚痴をこぼしつつ拳を握る。

ハヤブサが次の攻撃をいつ仕掛けてきてもいいように、腰を落とし神経を張り詰める。


「お兄さん、ひとつお手柔らかに」


「お前がわたしをお兄さんと呼ぶのはまだ早い!」


勢いよく差し出された手のひらから光線が、俺を狙って放たれた。

俺は一歩横にずれて、難なくそれをかわす。

光線の先端は校庭の土に当たって土埃をあげ、光が拡散した。

濛々と舞い上がる土埃を浴びて、生徒たちは悲鳴をあげながら逃げ回る。

埃に紛れて、今度はハヤブサの背後に回り、俺は奴のお尻を思いっきり蹴り上げた。


「うっ! 目くらましのつもりか」


「そちらが埃をあげたんですよ」


「生意気な」


今度は右手でハヤブサの脇腹を狙う。

だが、右手はハヤブサの左わき腹をかすめただけだった。


「おやおや、どうした」


そう言ったハヤブサの回し蹴りが俺の腹にヒットした。

勢いで飛ばされ、俺は地面にバウンドして落ちた。

なんとか立ち上がろうとして、四つん這いになった口から鉄分の味がするものを吐き出す。


女生徒たちが悲鳴をあげている。

生徒たちからは「これヤバくないか」という声が聞こえ始めた。


「最上、がんばれ! 負けるな! でも、ハヤブサさんも頑張ってください」


狩野、お前の応援の仕方は変だぞ。

両方応援する気持ちはわかるが、あまり嬉しくないな。

それに、ハヤブサは全然「お手柔らかに」してくれない。

素手で魔法を使ってくる。


なんで下校しようとしたところで、こんなとんでもない相手に遭遇してしまうのか。

今日の運の悪さを嘆いた。

たぶん逃げても追いつかれてしまう。


「悪いな。そろそろフィナーレとさせてもらうよ」


ハヤブサは、ゆっくりと右手を差し出して光線を発射する構えを見せた。

一か八かで俺は、地面を思いっきり蹴り上げて高くジャンプする。

だが、光線は虹のように弧を描いて俺を捕えた。

全身がしびれて気を失いそうになる。


このままハヤブサの上に落ちてやろうか。

ぎりぎりの意識の中でハヤブサの頭部を狙って落ちる。

ごめんよ、桜庭・・・


だが、ハヤブサは俺を軽くあしらうように避け、そのまま地面に落ちた俺に魔法弾を連発してきた。


パチッパチッパチッパチッパチッパチッ・・・・


激しい連打を浴びながら必死にこらえる。


野次馬の生徒たちに動揺が走った。


「これ、魔法対生身じゃないか。不公平だ」


「そうだ、そうだ。先生、これおかしくないですか?」


五十嵐先生は生徒たちに責められても動じない。


「いや、公平だ」


「止めてくださいよ、先生。このままじゃ最上が死んでしまいますよ」


「誰か救急車を・・・」


「いや、違う。誰か、桜庭を呼べ。この争いを止められるのは桜庭しかいない」


「よっしゃ、俺、呼んでくるわ」



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