第10話 マジックバッグの中身

「アイテムボックス」


 狩野の言った通りだ。

アイテムボックスと唱えるだけで、右手のステイタス画面にそれが表示された。


「あ、アイテムボックスが現れたよ」


「ほらな、僕が言ったとおりだろう。

最上にはその能力があったんだよ。

どうして今まで気が付かなかったのか、その方が不思議だ」


「お、おう、ありがとな」


今まで気が付かなかったのかと言われても困る。

俺はミッションが来るままに、それをクリアしてポイントを稼いでいただけだ。

学校ではいつも五十嵐先生に叱られているから、俺はレベルが低い劣等生だしね。


狩野に教わった通りに、マジックバッグの中のアイテムをひとつひとつアイテムボックスに移動させる。

ステイタス画面は俺にしか見えないため、狩野にはわからない。

しかし、マジックバッグから取り出した物は狩野にも見えている。

魔石、魔石、魔石、魔石・・・


「意外と魔石を持っているんだ。すげぇ」


無双アイテム、ボム、ボム、ボム・・・


「ふーん、無双アイテムも持ってたんだ」


コイン、コイン、10コイン、50コイン、100コイン・・・・


「さすがポイ活の覇者」


おにぎり、おにぎり、豆、豆、豆、バナナの皮・・・


「バナナの皮? そんなの何に使うんだ」


木槌、釘、釘、釘、のこぎり、竹刀・・・


「お前、大工か?」


軍手、ランタン、飯盒、・・・


「キャンパーかよ」


「あと、今日のポーションだ」


「お前、結構アイテムをたくさん持っていたんだな。

どこでこんなに揃えたんだ?」


それは、俺には毎日ミッションが来てそれに従っているだけだと説明したところで、誰かが部屋のドアをノックした。


コンコン


婆ちゃんが顔を出して、狩野を見て挨拶をする。


「ようこそ、いらっしゃいました。

うちの忍がいつもお世話になっております」


「俺の婆ちゃんだ」


「あ、どうも。狩野です」


「まあ、お口に合うかわかりませんが、

バナナのスムージーです。どうぞ召し上がってたんせ」


「あ、どうぞおかまいなく・・・

でも、美味しそうだから、いただきます。

・・・・うまい!

最上はいつもこんなにおいしいものを飲んでるのか!」


「あんやー、喜んでいただけてよかったです」


「婆ちゃん、もういいよ。あっちに行ってて」


「へば、まんず、ゆっくりしてってたんせ」


婆ちゃんがドアを閉めたのを確認してから、おれは言った。


「はい、これが約束のワンドリンクな」


「最高っす! ところで、話の続きだ。

お前に来るミッションって何だ?」


「最初は筋トレメニューが多かったけど、

最近はダンジョン探索が多いかな」


「どこのダンジョンへ行ってるんだ?」


「それは・・・・」


誰にも知られていないダンジョンの存在を狩野に教えるのには、ちょっと勇気が要る。

もし、学校の誰かに知られて荒らされたら困るのだ。

でも、アイテムボックスを教えてもらったし、狩野を信用して俺は打ち明けることにした。


「それは・・・・

まだ誰にも知られていない無名のダンジョンだよ。

この周辺には未発見のダンジョンがまだたくさんあるんだ」


「マジか」


「行ってみる?」


「うん、行く、行く!」



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