第9話 ダンジョン探索はポイ活じゃないらしい

 間違っている。


 狩野に指摘されて俺は焦った。

迷宮探索高専は、実技演習に特化した高校で座学が少ないため、俺は基本的知識が足りない。

自分ひとりでダンジョン探索を楽しんでいるだけだから、探索者として当然知っているべきことを知らないという欠点がある。


「狩野が言ってるのは、アイテムボックスとは買えるものじゃないという意味か?」


「お前、普通高校入学の時点で、能力が普通レベル10くらいになっているだろ。

レベル10になればアイテムボックスを覚えるんだよ」


「覚える? レベル? 俺、ポイントしか見てないから、お前が言ってる意味がわからない」


「おいおいおい、マジかよ、頼むよ二年にもなってよ。

いいか、物事の流れを説明するからよく聞けよ。

ステイタス画面を出す能力があって、探索者になれる資格をもらいます。

高校生になってレベル10になりました。

と、同時にアイテムボックスを出す能力が開花します。

アイテムボックスと言葉に出すか、もしくは念じれば、目の前にアイテムボックスが表示されます。

要するに、売ってるものじゃなくて、アイテムボックスは能力なんだ」


「え! そうなの? じゃ、クラスのみんなはアイテムボックスを使えるの? 

知らないの、俺だけ?」


「特に皆言わないけど、アイテムボックスのスキルは習得していると思うよ。

配信していたらなおさらのこと。アイテムも増えているだろうしね」


「知らなかった。マジックボックスで事足りるものかと・・・・」


「入学当初はマジックボックスに入るくらいしかアイテムを持ってないから、

学校で支給されるもので十分だけどね。

二年になってマジックボックスを二つも三つも持って、ダンジョン探索なんかできるわけねえだろ」


無知だった。

ダンジョン探索・イコール・ポイ活だという認識だった。

レベルってそんなに重要なんだ。

皆はアイテムボックスを使えるくらいレベル上がっていたのか。


「ダンジョン探索はポイ活じゃないのか。

俺は無知だった。ありがとう、狩野。教えてくれて」


「ポイ活だと思っていたのが信じがたいよ。

まあ、そんなにへこむな。お前だって実は使える能力かもしれないよ?

ただ知らなかっただけで」


「そうかな・・・自信がない」


「その可能性はあるよ。だからあまり落ち込むなよ」


そう慰められても、クラスのみんなが当然のように使っているスキルを知らなかったショックは大きい。

それに、配信していたらなおさらの事と言っていた。


「狩野は配信しているのか?」


「してるよ」


「え? そうなの? 配信って機材を揃えたりしてお金がかかるんだろ?」


「最上、お前は本当に今まで何やってたんだ? 

国が無料の配信サービスをしているし、配信用機材は学校が貸し出ししていることを知らなかったのか?」


「知らなかった」


狩野は頭を抱えてしゃがみこんだ。

頭でも痛いだろうか。


「大丈夫か、狩野・・・頭痛か?」


「今、ちょっとめまいした」


狩野のめまいは俺のせいだ。


「わかった。僕がお前の家に行ってレクチャーしたるわ。

学校じゃ他のやつに見られて何を言われるかわからないからよ」


「え、俺の家に? いいよ・・・・」


いいよ来なくて、

と言いたかったが、このチャンスを逃したら俺はこのクラスから落ちこぼれて行くような気がして、すぐ言い換えた。


「いいよ、俺の家に来て教えてくれ」


「ああ、一回3000円な。今ならお得な初回無料だ」


「そんな・・・金とるのかよ。そんな金持ってないよ。

そうだなぁ、えー-っとぉ・・・・

初回以降は、日帰り温泉ワンドリンク付きでどうだ」


「それのった! 商談成立。」


こうして、俺は家に初めて友達を招待する体験をすることになった。

東京にいた頃も一度も友達を呼んだことはなかったのに、俺の心をこじ開けたのは狩野だった。



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