親友と、根本クラスと③

 三年生に進級した。

 残念なことに、クラス替えにより僕は友助とは別のクラスになってしまった。僕は一組、友助は二組だった。

 幸いなことは、沼尾と根田は二組に、竹部は三組になったことだった。さらに、友助と仲のよかった「友助の友達」のような位置関係だった数人の生徒が僕と仲よくしてくれて、それなりに充実した生活を送ることができた。

 毎日ではないが、休み時間には仲のいいクラスメイトや、隣のクラスの友助たちと体を動かして遊ぶこともあった。

 一、二年生のときに比べ、描く量や時間は減ったが、むしろ質が上がった。

 図工の時間が、特に絵を描く授業の時間が、僕にとってはまさに水を得た魚のようで、生き生きとできた。通知表の図工は、「A評価」以外取らなかった。

 担任のおじちゃん先生も僕の絵に関心を持ってくれて、クラス目標などの掲示板に添える絵を、女子生徒と共に僕にも描いてほしいと依頼した。三年二組で僕は、「絵の上手い男の子」という肩書きを獲得した。

 しかし、楽しかった学校生活は、三年生までで一度、急ブレーキがかかる。

「魔の○○」であるとか、「地獄の○○」、さらには「呪われた○○」という負のタイトルがつくならば、その一年間、○○の部分には「四年一組」が入る。魔の四年一組、地獄の四年一組、呪われた四年一組だ。

 

 明日から四年生になるという不安や緊張で、午後十一時の数分前に目を覚ました。隣の布団のお母さんは眠っていた。

 トイレに起き、用を足す。リビングに行くと、何気なくテレビを点けた。小学生の自分が夜遅く、テレビを見ているということに、背徳感を抱いた。すぐに怒られるかと思ったが、音量に配慮したためか、お母さんはまだ眠っているらしかった。

 十一時になると、アニメが始まった。今日から放送開始になった『ユニティ・フラワーズ』というアニメだった。第一話では主人公らしき男性と、一人の青年のそれぞれの視点でストーリーが展開していく。アニメの中盤、擬人化した花のキャラクターたちが、敵である擬人化した虫と戦っている。主人公は死なない、という勝手な思い込みから僕は衝撃を受けることになるが、このあと主人公だと思っていた男性は死ぬ。それだけ、強敵という演出だった。死の直前、主人公の頭から花が咲き、種ができる。主人公と共に中心の視点になっていた青年が登場し、その種を飲み込むと、タンポポに擬態した姿となる。このアニメでは、花に擬態することを「擬人花ぎじんか」と言った。擬人花した「ダンデ」と名乗る青年は見事、敵を撃退する。しかし、新たな敵「タイフーン」の存在を認識し、二話に続く形で終了した。

 胸がときめいた。何だこれは、かっこいいじゃないか、かっこよすぎるじゃないか、と放心した。

 十一時半になり、アニメが終わった頃、寝室から「じゅーん、寝なさい」とお母さんの声がした。

 しかたなく布団に入るが結局、その後はあまり寝つけず寝不足で四年生を迎えることになる。

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