第2章 公園での再会!②

 廉は一旦、家から自転車を持ってきた。結衣ちゃんも赤色の自転車を持ってきてる。

 ふたりで駅まで自転車をこいだ。五月の木々が優しく葉を茂らせている。この世界って美しいんだな。


 駅の駐輪場に自転車をふたりして置いた。この駅は寂れた駅で、コンビニくらいしかない。

 でも、一駅だけ電車で移動すれば、途端に都会だ。

 華やかなイルミネーションが輝く、千葉でも有数の都市。


 廉と結衣ちゃんは、そこの「丸岡ビル」の六階の展示場に向かった。結衣ちゃんいわく、「そこで友達のデザイナーさんがバレリーナの衣装を展示している」らしい。

 丸岡ビルはお洒落な雑貨屋さんや服屋さんが多い。けれど、エスカレーターで上がっていくと、役所の施設が途中の階にあり、だんだんと落ち着いた雰囲気になる。

 六階までいくと、すれ違うのは五十代くらいのご夫婦とか、おじいさんとか。グッと年齢層が高くなる。


「ほら、先輩、ここですよー」

 結衣ちゃんが弾んだ足取りで前を歩いている。彼女は白地にりんご柄の可愛いワンピースを着ていて、今の季節にそれがピタリとはまる。廉は家を出る時に適当に着てきたピンクのポロシャツなので、若干恥ずかしかった。


 もっとお洒落してくるべきだったな。


「結衣ちゃんー。来てくれたんだね嬉しいー。そちらのイケメンさんは? まさか、彼氏さん?」


 髪をお団子頭にした、二十代くらいのお姉さんが、結衣ちゃんの手をとって握手している。


「うちの学校の生徒会長さんです。今日はメガネをかけてないから、イケメンさんですよね」


 メガネをかけてないから? 

 そう言えば、家をふらりと出る時に、普段の伊達メガネなんてもちろん置きっぱなしにしていた。

 濃緑色のメガネ。廉の「装備品」なのだが。


 女の子たちの話を邪魔するのも悪いので、展示されているバレリーナさんの衣装を観察する。


 一目でアラビア風とわかる白い衣装は、宝石を思わせるキラキラした五センチくらいの大きなビーズが、スカートの裾に刺繍されていた。布自体に細かい刺繍もしてある。これを着て踊るのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る