第2章 公園での再会!①
ゴールデンウィーク中は、姉の紗夜も帰省していた。紗夜は、父さんがバラエティの録画を見てる横で、熱心に、専門学校で学んでいる「園芸療法」の素晴らしさを力説してる。母さんはのんびりとホットケーキを焼く準備をしている。
「手伝うよ。母さん」
廉は母さんの横に立つと、置いてあった卵を片手だけで割って、母さんの前のボールに入れた。母さんは一瞬驚いた様子だったけれど、嬉しそうに「ありがとう」と言う。
「なら、レンくんにホットケーキ、全部任せていい? わたし、サヤちゃんと話してるから」
母さんはあっさりと、「役目」を廉に押し付ける。
幸い、家庭科は嫌いではない。というか、すごく良い成績だと思うのだ。これまで自覚してなかっただけで。
二個の卵を順に割り、ホットケーキミックスを入れて、牛乳も計って注ぐ。
と思ったが、思い切って、冷蔵庫の中の「オレンジジュース」を牛乳の代わりにすることを思いついた。
これは実験だ。失敗してもいいのだから。
ホットケーキを焼き終わって持っていくと、紗夜が思ったとおり、小鼻をヒクヒクさせている。
「廉。すごく良い匂いなんだけど。何入れたの?」
「食べてのお楽しみ。俺、出かけるから。感想は後で聞く」
オレンジ風味のホットケーキ。自分では自信作なのだが、もし「低評価」をつけられると自信喪失しそうなので、あえて、用事で出かけるふりをした。
用事なんてないので、近所の公園をぶらつこう。
公園のしだれ柳の下に、誰かがいる。小さなノラの猫をなでてるのは、結衣ちゃんに違いない。
廉に気づくとにこりと笑ってる。その目の下に少しのクマがあるように見えて、心配になる。
「そのクマ、どした」
色褪せたブランコに腰掛けると、廉は聞いた。
「絵画製作に熱中し過ぎて、二時間しか寝てないんです。でも、いいものができました」
結衣ちゃんはノラの猫を離してやると、バイバイと手を振ってる。
「先輩、予定ありますか? この後」
まぶしく笑って聞いてくれる、その表情に曇りがなくて安心した。
「用事ないからついてくよ。どこでも」
廉は答えた。
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