第1章 生徒会室での雑談①
廉は、昼ごはんを基本的には三階の片隅の生徒会室でとることにしている。「仕事」が立て込んでいる時には食べるのなんか片手間で、分厚い資料を見たりエクセルを使わないとならない。
それに、情に厚いことから周りに持ち上げられて生徒会長にはなったけれど、実は一人でいるのが好きな陰キャラのせいもある。
そんな廉の「一人を愛する」習性をわかってて、なおもくっついてくる難儀な男がいる。同じクラスの奏(かなで)だ。
進藤というありきたりな名字ながら、普通でないのがこの男だ。ピアノの腕が全国大会レベル。進藤一家は音楽家の血筋のようで、じいさんがえらい指揮者だとか、おばがバイオリニストだとか聞いたことがある。
「結衣ちゃんかあ。お前の『ドストライク』そうじゃん。で、次に会う時までそのぬいぐるみを持っておくのか? そいつは遊園地のキャラだぞ。ぬいぐるみのキャラの名前知ってんの?」
「レディ・ミミだよ」
廉はつい、答えてしまった。そして、はっと気がついて口をおさえる。
奏は幸い、廉のそういう「可愛いもの全般をこよなく愛する癖」はとうに心得ていたようだ。
「ヘンテコな名前だな。耳とミミをかけてるわけかー」
なんて言いながら、コンビニのノリ弁当の最後の一口を大口開けて食べていた。
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