鉄道模型よもやま話

第47話 お掃除用綿棒の選び方

 「車輪を磨くには、綿棒がお手軽でいいんだけど」


 真一は、綿棒の先にレールクリーナー液をちょいと付けて、踏面を磨く。綿棒に黒い汚れがついていく。動力車でなければ、車輪は指でくるくる回せるので掃除は楽々なのです。


 「ここで重要なのは、薬局とかドラッグストアで御徳用の綿棒を買う事なんだ」

 「どうして?真一お気に入りの百均でいいじゃない」

 「値段けっこう違うよ?」


 二人の抗議に、真一は不敵に笑った。


 「残念ながら、百均の綿棒は合わないものが多いんだ」

 「合わない?」

 「綿棒が?」


 磐梯いずみと蔵王ひかりは、納得行かないといった風に真一を見る。形も長さも大して変わらないはずの綿棒に、そんな違いがあるの?


 「百均の綿棒は、軸が中空のプラである場合が多い」

 「中空ってなに?」

 「つまり、ストローみたいに中が空っぽな構造ってこと。軽くしなやかに、そして値段を安くするする工夫なんだ。耳掃除には向いているんだろうけど」

 「何かまずいの?」

 「磨こうと力を入れても、そのしなやかさが裏目に出て、力が逃げるんだ。くにっと曲がって、力を込めて磨けない」

 「あらら」


 ふふん、と真一は手元の綿棒をつまむ。


 「だから、ちょっと高くても、薬局で売っている軸がしっかりしたタイプの綿棒こそがマストなのです」

 「ふうん、百均にも意外な落とし穴があるのね」

 「もちろん、お店や仕入れ時期によっては固い軸の綿棒を売っている時もある。けれど、いちいち確認して買うのは手間だし、間違えた時の精神的ダメージが大きいので、僕は最初からドラッグストアで

 「なるほど、したんだね。だからあの綿棒使ってないんだ」


 部屋の隅に追いやられた百均の綿棒箱を横目で見て、蔵王ひかりは肩をすくめた。


 「普通に、耳掃除に使えばいいじゃん」

 「いや、耳掃除を自分ですると、いずみが怒る」

 「弟の耳は姉の耳、勝手な掃除は許されない。そうだ、ひかりも今度掃除する?この部屋には梵天付きの耳かきがいくつか隠してあってね」

 「はい、是非」

 「勝手に隠すな……」


 耳かき以外にも、物陰から駄菓子を取り出すいずみを真一は目撃したことがある。まさか他にも色々隠してないだろうな……ちょっと疑心暗鬼になる真一であった。




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