特別編 おまぬけな日常【100PV感謝】

 「真一、北極ってあるよね」


 僕のベッドに寝転がっている、磐梯いずみが気の抜けた声で言う。


 「あるがどうした」

 「北がNで南がS、東がEで西がW」

 「まあそうだな」

 「南極もあるよね」

 「あったがどうした」

 「じゃあさ、東極と西極ってないのかな」


 は?


 「まさか本気で言ってるわけじゃないよな?」

 「さあどうでしょう」


 僕はため息をついて、机の引き出しから棒磁石を取り出し、磐梯いずみの目の前に落ちるよう軽く放り投げた。


 「何これ」

 「磁石」

 「……で?」

 「つまり、その磁石にE極とW極があるか?ってことだよ」

 「あるわけないじゃん」

 「だから、地球にも東極と西極なんてものは存在しない」

 「なるほど、そう説明するのか」


 磐梯いずみはなにやら、スマホをごそごそやっている。


 「うむ、いいよ真一。あんたのお姉さんスキスキ度は九十パーセント」

 「なんだそれ?」

 「心理占いのサイト。変な質問に対する答えで、隠された愛情が判るんだって」

 「馬鹿馬鹿しい」

 「にっひっひ、照れなくてもいいのよ真一。でも私たちは姉弟、これは禁断の愛」

 「姉弟じゃねーっての」


 言ってすぐにしまったと思った。この場合は乗っておくべきだった。


 「んもー、真一のえっち」

 「なんでそうなるんだ。てか用があるって言ってたのに、ないなら帰れよ」

 「じぉあ私の部屋まで送ってくれる?もう夜遅いし」

 「んー、まあそれくらいなら」

 「いや待って。送り狼になるつもりね!?」


 あーもう。


 「送らなくていいならとっとと帰りなさい」

 「送りなさい」

 「命令かよ」

 「おんぶがいい」

 「……ほら」

 「にひひ」


 満面の笑みを浮かべる磐梯いずみを背負って、僕は隣家まで歩くことになった。




 次の日の放課後。




 「松島くん」

 「なんでしょう。てか、歩きながらスマホを見るのは良くないよ」


 蔵王ひかりは僕の忠告に耳も貸さず、スマホをいじる。


 「電気には直流と交流があるのよね?」

 「あるね」

 「直流は+と-だけど、交流はどうなのかしら」

 「交流は確か、+と-が周波数で入れ替わってるはずだよ。だから+でもあり-でもある」

 「ふむふむ」

 「では交直流ではどうなるのかしら」


 は?


 「いえね、電車でもあるじゃないの交直流って」

 「あるけどそれは」

 「つまり+と-の他に、×と÷の電気があるのかしら?」

 「ないない、なんだよ×と÷って、電卓かよ。電車の交直流っていうのは、直流でも交流でも受けて走れるって話で、そういう第三の電気があるってことじゃない」

 「なるほど、そう説明するのか」


 なんかどこかで聞いたようなことを言い出す蔵王ひかり。


 「うん、いいね松島くん。君の部活仲間との相性度は九十パーセント」

 「なんだそれ」


 僕はげんなりする。


 「心理占いよ。最近流行ってるんだこれ。当たるらしいよ?」

 「全く聞いたことがない」

 「そう?ナウなヤングにバカウケって書いてあるけど」

 「死語に死語を重ねてさらに死語かよ」


 二人での下校はだいたいこんな感じのくだらない話ばかりになる。まあ、クラスメイトの話なんかされても共通の話題にならないんだから、仕方ないと言えば仕方ないのかも知れないけど。



 それでも蔵王ひかりは楽しそうに笑う。ま、楽しんでるのならいいかもね。



 「それはとにかく、歩きスマホはやめなさい。部員資格を剥奪するぞ」

 「えっ、それはヤダ。しまうしまう」


 慌ててスマホをポケットにつっこむ蔵王ひかり。うむ。それで良い。



 みんなも歩きスマホは駄目だぞ!陰キャとの約束だ!




-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=

 どうもです。


 ちょっと気を抜いている間に100PVも読んで頂いて、本当にありがとうございます。なかなか進まないお話ですけれど、更新はしっかり続けて行きたい、と思っています。


 というわけで、100PV記念にしょうもない話を挟んでみました。とか言ってますけど書くのが遅くて今130PV越えてたりしますトホホのホ。「転校生は~」も200PVを越えちゃってるので、そっちにも何か書かないとと思っていますが……


 真一が何も模型について詳しくなくて工作もおっかなびっくりなので、もどかしいとは思いますが、宜しければ今後もお付き合い頂けると幸いです。


 それでは!



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