第14話 進言その2
那須野は自分のカバンの中を探って、僕の所へ何かを持ってきた。
それはタバコの箱よりも薄いくらいの、蓋が透明なプラスチックの箱だった。
「なにこれ?」
「これは精密ドライバーセットだ」
誇らしげに言う那須野。確かに、かなり小さいプラスとマイナスのドライバーが何本も、綺麗に並んで箱の中に入っている。
これなら、かなり小さなネジでも回せそうだ。
「こいつは百円ショップで買えるから、ひとつ持っておくと便利だぞ。最近の模型はビス止めも多いし、このマイナスなんかはハマった部品をこじって外す時なんかにも使える」
「えっこれセットで百円なの?」
「そうだぞ。五本とか六本のセットで百円」
僕はその精密ドライバーセットをまじまじと見つめる。確かに、動力車以外の台車を固定するネジは、このプラスドライバーがぴったりに思える。こんなものがあったのか、世界はまだまだ知らないことだらけだ。
「ニッパーとピンセットは持ってるんだろう?なら、あとはこいつがあればパーフェクトだ」
誇らしげに言う那須野。確かにそうだ、ピンセットでこじるよりはこの細いマイナスドライバーの方が、力も入れやすそうな気がする。
キーンコーンカーンコーン……
その時、予鈴が鳴った。そろそろ朝のSHRか。
「どこの百円ショップでも似たようなものは売ってるぞ。メガネのネジとかパソコンの中身とか、他にも色々使えるからな。俺はこれを常に一セット持ち歩いてるんだ」
でも、持ち歩いても使う機会なんてあるんだろうか?
僕は精密ドライバーセットを那須野に返す。那須野はその箱を持って自席へと戻って行った。僕も慌てて模型のカタログを机の中に片づける。
しかしまあ、持つべきものは友人だ。塗装の事も相談できそうだし、他にもなかなかいいヒントを貰った気がする。
今日はまず、帰りに百円ショップに寄ってみようと、まだ一時間目も始まっていないというのに、放課後へと思いを馳せる僕だった。
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