接触篇
第1話 秋葉原その1
鉄道模型は、ヨーロッパではキングオブホビー、紳士の趣味と言われている。それはたぶん、高尚な趣味という意味じゃなくて、【紳士みたいに落ち着いてやれ】という意味だと僕は思う。粗雑なガキんちょが手を出していいものじゃないんだ。
僕は、手持ちの模型を壊してしまったことを後悔していた。おもちゃ屋経由で修理に出そうとも思ったけれど、小学生のおこづかいでは賄えない、しかも親にバレる危険がある。
いつか元に戻したい。僕はずっとそう思い続けて来た。そしてその機会は、高校に入学した直後に訪れたのだった。
東京のオタクの聖地、秋葉原。家と学校の間にあるその土地に、僕は足を踏み入れた。通学定期で行けることに気付いた僕は、入学して初めての日曜日に出かける事にしたんだ。
日曜だというのに、いやいや日曜日だからこそか、人はものすごく多かった。子供から大人、日本人も外国人もうじゃっといる。買い物だろうか、観光だろうか。
僕も人並みにゲームやアニメに興味はある。プラモデルだって作る。秋葉原は、そんなホビー各種についても揃っていて、ある意味目の毒だ。
ゲームセンターの店頭には、UFOキャッチャーの筐体が照明を派手に光らせて客を誘う。アニメキャラのフィギュアやぬいぐるみはとても魅力的だ。
今日、僕には特に予定はない。この秋葉原で、何か新しい趣味との出会いを探しに来た。高校生になり、お小遣いも増やしてもらった。校則でアルバイトは禁止だけれど、漫画やゲームの他にも何か始めるいい機会だ。
小さなお店がまるごとガチャガチャの機械で埋め尽くされている。所狭しとトレカが飾られた店もある。等身大の人形?ドールっていうのか?これは値段がものすごく高い。ゲーミングPCもピカピカ光っている。最近のゲームはすごいんだよな。
その時、僕の目は雑居ビルの看板に吸い寄せられた。そこには、こう書いてあった。
【中古鉄道模型】と。
僕はふらふらと、そのお店に吸い寄せられて行った。
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