43、くまのぬいぐるみ

 そんなこんなで、ぼくはくまのぬいぐるみになることになった。

 もふもふの体に頭をのっけて、正人くんが加工してくれたくまの顔を被る。頭の方がかなり重たいから動くのはすこし難しいんだけど、体に重りを入れたらという意見は「私が抱えられないでしょう?」と言う花子ちゃんに却下されてしまった。普段は首だけでぷかぷか浮いていればいいし、何かあったときは運んでもらったらいいから、仕方がないかと受け入れている。花子ちゃんに抱っこされるのは、何だか嫌いじゃないし。

 ふかふかでもこもこの体は、ちょっぴり動きにくいし、元々のぼくの体と比べるとできないこともたくさんあるんだけど、案外悪くない。

 ぼくの体を見つけることを諦めたわけでは全然ないよ。ないけれど、光次くんの話で思い出した、ぼくが元々いた場所に行ってみたけど何にも見つからなかったし、近くにぼくの体がある感じもしなかったし、仕方ないからのんびり探すのでもいいかなと思っている。家族がぼくを探しだしてくれるかもしれないし。


 こうしてぼくは、解決屋のマスコットとして、働くことになったのだった。

 小さな子に抱きつかれたり、大きな子の膝に乗ったりして、彼らの心を癒す仕事は、ぼくには結構あってると思う。時々力が抜けちゃうと、ゴロンと首だけ転がり落ちてしまうけどね。

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解決屋道中四方山話 須堂さくら @timesand

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