42、くまと首と
じっとくまのふかふかの右手を見つめる。これはぼくの手だ。と思い込んでみる。何となく、神経が通ったような、そんな気がしてくる。うにうに。手の形はしていないから、指を開いたり閉じたりはできないけど、何となく広げたり縮めたりする気分で。うにうに。おぉ。
「動かせる?」
「動かせるね」
「抜け首ってそんな性質もあるの?」
「普通は駄目なのかもしれないけど、ぼくだと何とかなるみたい」
何しろぼくは変みたいなので。
くまのぬいぐるみの手を、うにうにと動かす。よいしょと手をついて立ち上がり、とっことっこと歩く。首の下の綿の感触が少しくすぐったいけれど、動くのに全く支障はなかった。
久し振りの体の感覚。とっことっこ。自分で歩けるし、触れる感覚。とっことっこ。わはは、楽しい。
「でも大分見た目がひどいわね。くまの皮でも被っておく?」
花子ちゃんがそう言って、綿を取り出したくまの頭をぼくに被せる。もこもこふわふわの外側と違って、内側はなんだかがざがざだ。
「ちくちくするよー!」
「ちょっとだけだから我慢しなさい!まぁこれなら見た目も悪くはないわね」
花子ちゃんは時々無茶を言う。
ぬいぐるみの内側のちくちくがくすぐったくて力が抜けて、ぼくの首はぬいぐるみから離れてゴロンと落っこちた。
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