39、鎌鼬の兄弟

 あるところに、仲の良い鎌鼬の兄弟がいました。道行く人を長男がさっと転ばせ、次男が鎌をふるった後に三男が薬を塗って去っていく。そういう風にして三匹でずっと生きてきました。次男は気が弱くて、いつもうっすら血がにじむかどうかというような傷しかつけられず、三男の薬はいらないくらいでしたが、それでも三匹仲良く暮らしていました。

 だけど次男はずーっと、自分が弱っちいことを気にしていました。三男の薬はすごくいい薬で、どんな切り傷もたちまち綺麗に治してしまうくらいなのに、こんなに小さな傷じゃあ薬があってもなくても一緒だ。そんな風に思っていました。だから次男坊は武者修行の旅に出ることにしたのです。兄ちゃんも弟も、それなら一緒に行くよと言いましたが、きっと強くなって帰ってくるからと、一匹だけで旅立ったのです。

 たくさんたくさん修行した次男坊は、最後に力試しをしようと考えました。妖怪仲間なら人より頑丈だし、弟の薬がなくっても傷はすぐ直るだろうと思って。

 その妖に「たのもう!」と声をかけたとき、力みすぎて足が滑ってしまいました。ぴょんと飛び上がってしまった体は、過たずその妖の首に向かって飛んでいきました。

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