38、鎌鼬

 鎌鼬はぽつんと立って時折きょろきょろと周りを見回すばかりでこちらには気づく様子もなかったので、ぼくたちが降りて向かうことにした。

 一階に降りるとちょうど正人くんが部屋を出てきたところで、鼬みたいなのがいる。と言う正人くんに、鎌鼬みたいだよと答える。

 皆で揃って外に出ると、鎌鼬さんがこちらに気づいてぴょんと跳ねた。こちらを、というかぼくを見てる?

「あわわ」

「鎌鼬さん、こんにちは。何か解決したいことがあってきたのかしら?それとも、この抜け首に用事かしら」

「抜け首?」

 どう考えてもぼくの方を見て、お化けか何かを見たみたいな顔をしていた鎌鼬さんが、花子ちゃんの言葉に反応して、花子ちゃんの方を見て、もう一度ぼくを見て、がくんと崩れ落ちた。

「ぬ、抜け首かぁ……」


 仕事場(寝室)に戻ってきて、鎌鼬の光次(こうじ)くんと向き合って座る。ぼくはくまのぬいぐるみの膝に乗っけられて、最近いつもぼくが乗っていた座布団には、正人くんが座った。

「君の首を落っことしちゃったの、おれなんだ」

「落っことす?ぼく、落っことされたの?」

 光次くんは、どうやら、ぼくが首だけになっちゃった時のことを知ってるらしい。

「おれ、武者修行の途中なんだ」

 光次くんが話してくれたのは、仲良しな鎌鼬の兄弟の話だった。

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