37、ぬいぐるみ

 家に帰ってきてしばらくは、のんびりとした日が続いた。依頼者もあんまり来なくて、来ても大したことのない依頼でその場で解決したりして、時々カロンさんが家に遊びに来て、ぼくを転がして遊んだり、正人くんが用意したご飯を食べたり、クマのぬいぐるみに寝そべったりしていた。

「そういえばさ、このぬいぐるみって元々正人くんが持ってたの?」

「そうよ」

「そうなの?」

 正人くんはふんわりした雰囲気だけれど、普段使いしている持ち物なんかを見ていても、こんな可愛いものを持っている印象はないんだけど。

「虎郎、人には色々あるものよ」

「なるほど」

「姪っ子が来るとき用に置いてるそうよ」

「……そっかぁ」

 それなら納得だけど、そんな前置き必要だったかな?

「……ん?」

 だらんとくまにもたれかかっていた花子ちゃんが、何かに気づいて立ち上がる。

「どうかした?」

「何かいる」

 窓に近づいていくので、ぼくも一緒に窓に向かう。そっと下を覗くと、茶色っぽい動物の姿が見える。

「鼬?……あぁ、鎌鼬だわ」

 依頼者さんかな?

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