28、マヨイガの住人

「あっそれ私のせいかも!ごめん!」

 カガミちゃんのことを説明すると、幽霊さんはぱちんと両手を合わせた。

「私、地縛霊みたいなもんなんだけどさー、この家と微妙に繋がっちゃってるらしくて、時々私の意思に従ってくれちゃったりするんだよねぇ。あの置行堀の子、カガミちゃんっていうのか、あの子めっちゃ可愛いじゃん。ちょこちょこ動くの見守るの楽しすぎて。だから多分家もなかなか移動しないでとどまってくれてたんだと思う。時々こうやって見守るの楽しいなって子の所にとどまったりはしてたんだけど。いやー思ったより時間が経ってたんだね!」

 幽霊さんは、マヨイガに迷い込んだまま死んでしまった人間なのだそうだ。

「何でも持って帰っていいって話は聞いたことがあったんだけどさ、あれもこれも素敵すぎて選べないー!ってずっと悩んでたら死んじゃった!あはは」

 かなりライトな幽霊さんだ。

「幽霊さんが時々釣りをしに行ってあげたらいいんじゃないの?」

「あーそれは無理だ。私この家が好きすぎて地縛霊になっちゃったクチだもん。ここから出らんないんだよ。私もあの子と仲良くできるなら嬉しいけどさ」

「あっそっか」

 幽霊さんが釣りをしに行けるなら、どっちも幸せでいいと思ったんだけどな。

「いやーしかしそんなに時間経ってたんだね。そろそろ移動しないとな。って私にどうこうできることじゃないけど。でも多分そろそろ移動すると思うよ。いやー残念だなーあの子可愛かったんだけどなー。あ、じゃあさ」

 口を挟む間もなくしゃべり続けていた幽霊さんが、ぽんと手を打った。

「一個お願いしたいことがあるんだけど」

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