26、帰り道

 カガミちゃんにさよならを言って、ぼくたちは帰途についた。道なき道を歩いていると、花子ちゃんがぼくに鞄に入っているように言う。

「人が来る?」

「人かどうかは分からないけどね」

 言われた通り鞄に潜り込んで、正人くんに運んでもらっていると、誰かの声が聞こえてきた。

―― 釣りに行かれたんですか?この辺りに魚の釣れる場所がありました?

―― えぇ、知人に聞いてきたんですが、鏡池という池があって。

―― えっ!あそこにたどり着けたんですか!?


 鞄の中で聞こえにくい声を拾うと、どうやら声の主はこの辺りに住んでいる人で、鏡池で時々釣りをしていたんだけど、一年ほど前から急にどうやっても池までたどり着けなくなってしまっていたらしい。釣った魚の数が合わなかったり、色々不思議なことはあったけれども質のいい魚が釣れる池だったので、神様の土地か何かに迷い込んでいて、その道が閉ざされたのだろうかなんて思っていたのだとか。

 何やら応えている正人くんの声がして、花子ちゃんの声もして、いくらかやり取りをした後、足音が聞こえてそれが遠ざかっていった。

 なるほどね。と、花子ちゃんの声がして、これまで進んでいた方向とは別の方向に、移動する気配がする。しばらく歩いた後に鞄を開けてもらえたので、ぼくは花子ちゃんに近づいてみる。

「マヨイガが来てるのよ」

「マヨイガ。って、来るものなの?」

「あれだって怪異の一つだからね、移動だってするわよ」

 さっきの人と話したおかげでなんとなく場所が分かったから、そこに向かっているんだと、花子ちゃんは言った。

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