24、釣果

 結論から言うけど、何もなかった。

 草木の生い茂った場所をぐるりと回ったけれども、池から離れない範囲は普通の自然だった。考えてみたら当たり前のことで、カガミちゃんだってこれくらいの範囲なら日常的にうろうろしている。それで何も異常に気づかなかったんだから、ここに来るのが初めてのぼくに何か気づくことができるはずもなかった。

「何もないなぁ」

「なにもなかったねー」

 ぼくたちは何も見つけられなかったけれど、池の周りをまわっている間、釣りをしている二人は何度も魚を釣り上げていた。その度にカガミちゃんが、おぉ。とか、わはぁ。とか言うので、それがとても面白かった。

「ただいま」

「ただいまー」

 とことこと(歩いているのはカガミちゃんだけだけど)二人に近づく。おかえりと答えてくれる二人の間、クーラーボックスの中にはなかなかの量の魚が入っていた。

「わはぁ、ごちそうだー!やったー!」

「こらまだ置いてってないわよ」

「あっそうだった。おいてけおいてけー!」

「はいはい」

 クーラーボックスを持ち上げた花子ちゃんが、そのままくるりとひっくり返す。きゃわぁとはしゃいだ声を上げたカガミちゃんが、パカンと口を開ける。口はカガミちゃんの小さな体いっぱいに広がって、ぼとぼと落ちてくる魚を丸ごと平らげてしまった。いい食べっぷりだ。

「はふぅ。まんぞくですー」

 おなかをぽんぽこに膨らませたカガミちゃんは、幸せそうにほっぺたを押さえて転がった。

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