22、鏡池
たどり着いたのは、思っていたより大きな池だった。はやてくんのボールを探した池より大きくて、そこここでぽこんぽこんと水が湧き出て水面を揺らしているのが見える。鏡池という名前の通り、水面は景色を反射して、木々の緑色に光っていた。
「誰も来ないの?ここに?釣りに来る以外の人も?」
「誰も来なくなっちゃったですねー。なんででしょかねー」
正人くんの言葉に、カガミちゃんが腕を組んで首を傾げる。
「ちょっと森の中に入ってこないといけないけど、景色もいいし、全く誰も来なくなるのは不思議なんだけどな」
だけどここまでくる道は、草に覆われて、ほとんど道としての役割を失っていた。誰も来なくなって長く経つというのは本当のことなんだろう。だからぼくも、何も気にせず浮かんだりしてここまで来たんだしね。
「何か変な感じがしなくもないのよねぇ」
花子ちゃんがそんなことを言いながらきょろきょろ周りを見回す。
「今考えても仕方ないわね。虎郎、あなた暇だろうからこの辺見て回ってなさいよ。体のある場所の手掛かりなんかもあるかもしれないし。でもあたしたちが見えない場所にはいくんじゃないわよ」
「うん。分かった」
「じゃ正人、さっさと釣りをするわよ」
「そうだね」
花子ちゃんがてきぱき指示をして、ぼくと正人くんはこっくりと頷くだけだ。
カガミちゃんは釣りの準備をする二人の間にちょんと座って、興味深そうに様子を眺めている。
ぼくはとりあえず、池の様子でも眺めてみようかなと飛び上がった。
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