19、クッキー
はやてくんが帰った後、ぼくたちはお礼を覗き込んでいた。小さなパッケージに書かれているのは、クッキーの文字と、ワンちゃんの文字。
「犬用クッキー、食べられなくはないけど、あんまり味しないのよね」
「そうなんだ?」
「家から持ち出せたのがこれだけだったんでしょうね。犬だものね」
「飼い犬だもんねぇ」
食べる?という花子ちゃんの言葉に、にゃおんと声が被った。
「あら」
窓から顔を覗かせていたのは、はやてくんが最初に来た時に見た三毛猫さんで、猫さんはすとんとこちらに降りてくる。
「目ざといわね。でもこれ犬用よ。あなた食べれそう?食べられないものは入ってないかしら」
にゃんと鳴いた猫さんが、封を切った袋をふんふんと嗅いだ後、もう一度にゃんと鳴いた。
「そう。なら依頼者を案内してくれた手間賃にあげるわ」
花子ちゃんがクッキーを手に取りだして、猫さんの前に差し出す。するんと花子ちゃんのそばに寄った猫さんが、口を開けた。
カリカリ、コリコリと音を立てながら、猫さんがクッキーを食べるのを見守る。花子ちゃんが猫さんのおでこのあたりをもにもにと撫でて、猫さんが気持ちよさげな声を上げた。
ぼくも撫でたいなぁ。ぼくの体、どこに行っちゃったんだろう。
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