15、依頼解決

 ざば、と音がして、はやてくんの手にはボールが掴まれていた。

「……これだ。ありがとう。虎郎」

「ううん。結構水を吸っちゃってるね」

 水底にずっと沈んでいたボールは、なんだかぼよぼよしていて、また投げられるか分からない状態だ。また、キャッチボールはできるんだろうか。

「キャッチボールは無理かもしれない。でも」

 いいんだ。と、はやてくんは言った。


 ざばざばと、岸に向かう。はやてくんの手は、ずっとぼくの頭の上にあった。ほっとした後に自分が水の中にいることを思い出してしまったはやてくんが、急にぶるぶる震えだしてしまったので、ぼくという支えが必要だったんだ。転んでしまったら支えるのは無理だし、しっかりぼくを掴んだ手は重たかったけど、はやてくんの安心のためには、ぼくがどうしても必要だったから、仕方ないね。

 ゆっくりゆっくりだったスピードが、岸に近づくにつれて少しずつ速くなって、最後は走るようにして、ぼくたちは岸までたどり着いた。

 はやてくんの手には、しっかりと、少し汚れてしまったボールが握られていた。

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