12、坂道
「うわぁはははははは!!」
「虎郎!あなただけ先に行ってどうするの!」
花子ちゃんの大きな声が、一瞬で遠ざかる。ぼくは坂道をゴロゴロ転がり下りていた。
あのあと、はやてくんから詳しい場所の話を聞いて、少し遠いから、正人くんに車で連れて行ってもらうことになった。正人くんはその場にいなかったけれども、はやてくんが帰った後で話を聞いて、分かったよと頷いていた。多分、こういうことには慣れているんだと思う。
それが昨日の話で、今日、ぼくたちは池に向かっているところ。駐車場に車をとめて、皆で歩いているところだ。ぼくは正人くんの鞄に入っていたのだけど、他に人がいなかったから、外に出させてもらったのだ。
坂道は転がった方が早いし楽しい。わははと笑いながら転がって、下にたどり着いたところでぴょんと飛び上がって浮かぶ。そのまま皆が下りてくるのを待った。
やがて皆がやってくる。正人くんはちょっぴり苦笑いで、はやてくんはそっぽを向いていた。呆れられたかなぁ?そして花子ちゃんが、怒った顔で、ぼくに手を伸ばしてきた。
「まったくもう、汚れちゃってるじゃないの」
「わぶぶ」
ごしごしとタオルで拭かれて、そのまま抱えられる。
「あたしまで汚れちゃうから、今度から外を転がるのは禁止よ」
「えー」
「禁止!分かりました。は?」
「抱えてくれなくても……わかりましたぁ」
じろりとにらむ花子ちゃんは、すごく怖かった。
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