11、狼男の探し物
狼男さんは、はやてと名乗った。はやてくんにはとても仲の良い友達がいるそうだ。ほんの小さな頃から仲良しで、いつも遊んでいたらしい。そのお友達は野球が得意で、キャッチボールをよくしたのだと言う。
「俺には野球は難しかったけど、キャッチボールくらいならできたから」
ある時池の近くでキャッチボールをしていて、はやてくんはお友達の投げたボールを受け止めることができなくて、ボールは池にぽちゃんと落ちてしまった。
「俺、情けないんだけど泳げなくてさ。拾えなくて、あいつはいいよって言ってくれたんだけど」
だけどそれ以来、キャッチボールをすることはなくなったんだそうだ。
「他の遊びはするんだけど、何つぅか、落ち着かなくてさ」
「つまりその池からボールを拾い上げたらいいのね」
「あぁ。だからまぁ、正確には探し物とはちょっと違うか」
「池の中のボールを探すんだから、探し物で間違いないわよ」
池に沈んだボール。ボール遊びができるような場所にある池なんだったら、多分色んな人がボールやら何やら落っことしてしまってるんじゃないかな。そんな場所からはやてくんのボールがちゃんと見つかるだろうか。そう思ったけど、耳やしっぽがあるなら垂れ下がってしまっているんだろうなというくらいにしゅんとしたはやてくんの姿に、ぼくは何にも言わずに様子を見守るだけにした。
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