9、お客さん

 窓から、きれいに晴れた青空が見える。

 ちゅんちゅんと雀の声が聞こえて、その声を覆い隠すようにカァカァとカラスの声がする。

 下の階から、またちょっと人の声が聞こえる。正人くんじゃない、男の人の笑う声が聞こえていた。

「花子ちゃん」

「何?」

「お仕事はいつ来るの?」

「さぁ?」

「えっ?」

 花子ちゃんの後ろ姿に声をかけると、ぴしりと背中を伸ばしたまま言葉が返ってくる。その言葉に驚いていると、花子ちゃんがくるりと振り返った。

「来るときは来るし、来ないときは来ないわ」

「そんなのでいいの?」

「仕事がなきゃ生活できないってもんでもないしね。あたしも、あなたもでしょう?」

「だけど人の生活の中に入ってるんだし、正人くんが大変なんじゃない?」

 人が生活するのに、お金が必要なのは知ってる。花子ちゃんが一緒に住んでいて、ぼくもしばらくお世話になるんなら、その分のお金がいると思うんだけど。

「正人は大丈夫よ。そういう風になってるもの」

「そういう?」

 ぼくの疑問は、続けて響いた「にゃおん」という声に遮られてしまう。花子ちゃんも前を向き直ってしまったので、それで話は終わりになった。

 ちらりと顔を覗かせたのは三毛猫で、もう一度にゃあんと鳴いた後、とことこどこかへ行ってしまう。

 と、思ったら、窓からぴょんと、何かが飛び込んできた。

「わぁっ!?」

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