8、お仕事

 ごはんを食べ終わったら、正人くんはお仕事の準備があるからと一階に降りて行った。

「正人くんは何のお仕事をしているの?」

「書道の先生」

「そうなんだ。じゃあ一階が教室なんだね」

「そうよ」

 ここに連れてきてもらったとき、まっすぐに二階に上がったから何でだろうなと思っていたけど、そういうことだったんだね。

 しばらくすると、下の階から人の声が聞こえてきて、しばらく何やら盛り上がった後また静かになった。

「生徒さんが来たの?」

「多分そうだと思うわ」

 花子ちゃんがそう言って、ぼくの頭を抱える。

「どこか行くの?」

「仕事場」

 花子ちゃんに抱えられて、連れてこられたのは寝室だった。布団はきちんと片付けられているのでまぁまぁ広い。昨日は気づいていなかったけど、大きなくまのぬいぐるみが座らせてあって、ぼくはその足の間に置かれた。

 くまはもし立ち上がったなら花子ちゃんよりちょっと小さいくらいの大きさだ。ふかふかの体が気持ちいい。

 花子ちゃんが押し入れから小さなテーブルを取り出して、部屋の真ん中に据えた。窓を開けて、手に持っていた何かを外に引っ掛けるような仕草をして、それからテーブルのところにちょこんと座る。

 えー?寝室が仕事場なの?本当に?

「うるさいわよ。虎郎」

「何も言ってないよぅ」

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