6、おやすみなさい

 正人くんと花子ちゃんがご飯を食べて。少しだけぼくももらって食事を終えて。それからまたしばらくぼくの体がどこにあるのかって話をした。ぼくの体があるのは分かる。無事なのも何となく分かる。でもどこにあるのか分からない。ぼくが体から離れたときに、どこにいたのかも何となくしか覚えていない。今までこんなことはなかったと思うんだけど。うーん?

 川を流れてきたんだから、上流から来たんだとは思うのだけど、それだって候補が多すぎる。

「考えこんでても仕方ないわね。何かのきっかけで思い出せるかもしれないし、様子をみましょう」

 花子ちゃんがそう言って、正人くんも頷いたので、ぼくはくるんと首を前転させて、お願いしますと言った。

「何か思い出したら言って。色々調べられると思うからね」

「うん。分かった」

 結論が出たところで、夜も遅いからもう寝ようってことになった。花子ちゃんがあくびをしながらトイレの中に消えて行って、正人くんがぼくを抱える。そのまま連れていかれた部屋には布団が敷いてあって、枕元に、タオルを敷き詰めた籠が置いてある。

「ここで寝られそう?」

「うん。ありがとう」

 籠の中に首を収めてもらう。ふかふかを頭の後ろに感じて気持ちいい。

「違和感はない?」

「うん。気持ちいい」

「なら良かった。何かあったら起こしてくれていいからね。おやすみ」

「うん。ありがとう。おやすみなさい」

 笑った正人くんが、部屋の電気を切る。暗くなった部屋で、ぼくはくるりと辺りを見回した。ちょっとずつ目が慣れて部屋がはっきり見えてくるのに反して、じんわりと、眠くなってくる。夢の中でぼくの体がどこにあるか分かったりしないかなぁ。そんなことを考えながら、ぼくは目を閉じた。

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