4、お風呂

 ぱちゃん。と、お湯が跳ねる。ふはー。と、息をつく。

「熱かったりぬるかったりしたら言ってね」

 正人くんがそんな風に言ってくれたから、ぼくはちょうどいいよと答える。


 あれから、どう頭をひねっても自分の体のある場所が分からなかったぼくは、花子ちゃんの「とりあえずご飯食べて危機も脱したみたいだから、お風呂にでも入ったら。川で汚れてるんだし」の言葉で、正人くんとお風呂に入ることになった。

 お風呂に入るといっても、ぼくには手も足もないので、正人くんにされるがまま、頭を洗ってもらって顔を洗ってもらって、洗面器に張ったお湯の中に入れてもらっただけだ。

「正人くん」

「うん?」

「ありがとうね」

「どういたしまして」

 正人くんと花子ちゃんは、二人で解決屋っていう、妖怪専門の困りごとを解決するお仕事をしているらしい。正人くんは「別に仕事じゃ……」とか言いかけていたけど、花子ちゃんのにっこり笑顔に黙ってしまった。

 ぼくはその、依頼者ということになるらしい。体をなくした抜け首。体を見つけ出してもらうのが依頼内容。

 正人はとにかく甘やかすタイプだから、解決しなくてもいっか。ってならないように気を付けてね。と、花子ちゃんがにんまり笑って言っていた。もしかして、花子ちゃんがそうなのかな。

 ぱちゃんとまた、お湯が跳ねる。とりあえず、お風呂が気持ちいいから、しばらくここに住んでもいいな。

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